福島生インタビュー

震災・原発事故で大きなダメージを受けた福島県の今の状況をキーマンに聞く


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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 特集「福島レポート」では、東日本大震災そして東京電力福島第一原子力発電所事故により、放射能汚染を受け、多くの住民の方が避難され街の機能を失ってしまった福島県浜通り地区が現在実際にどうなっているのかをいろいろな関係者からのインタビューを通して伝えていきたいと思います。
 今回は、昨年10月17日に(株)鳥藤本店の専務取締役 藤田 大氏にインタビューした内容をお伝えします。

(株)鳥藤本店とは

(株)鳥藤本店 藤田 大氏

(株)鳥藤本店 藤田 大氏

影山:
まずはじめに藤田さんの紹介をお願いします。
藤田 大氏(以下、敬称略):
今はいわき市四倉を拠点としてお弁当の提供などをしていますが、もともとは富岡町で食堂を始め、その後事業所等への給食業務や弁当仕出しを行い、震災前は東京電力福島第一、第二原子力の食堂や寮の食堂など35か所の食堂、売店をやっていました。震災後は、いわき市四倉で営業を再開しました。現在は、給食業務とともに富岡町の復興のためにいろいろ活動をしています。

震災後、炊き出しから仕事が始まった

影山:
震災、原発事故の後、仕事はどうなりましたか。
藤田:
原発事故後、私は東京へ避難していましたが、会社の115人の社員の安否確認ができていませんでしたので、3月27日に緊急時連絡先を取りに1人で富岡の会社に行きました。その時、東京電力から住民の方の避難先で炊き出しをやってほしいという話をもらい、二つ返事でOKしました。4月4日に東京で打合せを行い、調理道具も何もなかったので帰り足で必要な資材を調達して、2日後には会津美里に行きました。その後、車をリースで調達し、従業員を集めて炊き出し部隊を作りました。その間にいろいろ探して、四倉に物件を見つけ、営業開始の準備をして、5月16日からお弁当を出せるようになりました。
その後は、Jビレッジで福島第一原子力の事故対応の拠点を作るということで、食事の供給をやってくれと言われ、対応をしました。その後福島第二原子力の食堂の再開などを行ってきました。
影山:
大変な活動をされたのですね。並大抵の努力ではなかったと思います。今仕事はどのようになっていますか。
藤田:
今は、各所で給食業務を行っていますが、今後に向けて、お弁当はちょっと休憩しようと思っています。四倉をセントラルキッチンすなわち集中調理場にして、ここで作ったものをパックして各地へ送ろうと思っています。大熊町など双葉郡は、人手不足です。いわきの方が人を採用しやすいです。双葉郡へ安定的においしい物を提供するセントラルキッチンが必要なのです。大熊には、30年といわれる廃炉事業を支える東電の大熊寮が作られました。それを長期間支えるキッチンにしたいと思っています。

富岡町はここ1年でガラッと変わりました

影山:
福島避難地域の現在の状況はどうなっていますか。
藤田:
私の職場のあった富岡町はここ1年でガラッと変わりました。除染が進み、人の流れができて、人の空気が感じられてきました。だんだんきれいになるという実感があります。さくらモールもオープンしました。帰還困難区域以外の避難指示が解除されました。富岡ホテルも営業開始、駅も再建されました。富岡で頑張ろうという人が増えてきました。「富岡プラス」という一般社団法人の中で富岡のサポータークラブを作りました。たくさんの人がサポーターになり、「えー、何やってるの」と避難者も集まってきました。住民と町をつなぐ組織です。

前向きにやっていく

影山:
復興に向けて歩き出しているということですね。
藤田:
平成25年5月から避難地域を車で案内することをしました。ふるさと富岡を何とかしようという気持ちです。来てくれた人に説明をしているうちに、富岡町を客観的に見られるようになりました。悲劇のヒロインはイヤだと思いました。富岡町第2次復興計画策定委員会に参加し、ワークショップを100時間以上やりました。熱い思いを持っている人がたくさんいて、こんだけいれば富岡町も何とかなるよなと思いました。復興にシフトを切り替えました。それなら仕事が必要だ。コンビニだ。福島第一原子力の大型休憩所でローソンを始め、その後、富岡町にも出店することができました。
除染が終わり、解体作業もそのうち終わるでしょう。そういう仕事をしている人もいなくなります。その時に人の流れをどう作るか。ここは、複合災害を学べる場所ですし、魅力ある場所として発信していきたいと思います。川内村はワイン作りを始めました。私も富岡町全体を活性化させる仕事に取り組みたいと思います。

国や東電と一緒にやっていく

影山:
素晴らしいですね。こういう取り組みに国や東電は十分サポートしていますか。
藤田:
発災直後から今までを思い返してみると、国や東電と被災地域や避難を続けざるを得ない住民の間には、深い溝があると思います。しかし、これから前進していくためには、敵対心ばかりではなく力を合わせることが不可欠です。国際廃炉フォーラムでも重要な課題とされていましたが「対話を続けること」が重要なのだと思います。型にはまった復興ではなく、本当に必要なのは何なのか?官民一体で考え、一つでも実現するために一緒に汗をかく必要があると考えています。

マスコミの報道は現場の一面を伝えているだけ

影山:
復興の状況など我々はなかなか良く分かっていないのが残念です。
藤田:
マスコミの報道は、一言でいうと切り取りです。地域の出来事の切り取り。どこを切り取るかで印象がガラッと変わります。帰還者がわずかで、「こんなところ帰るわけない」という報道。お祭りなどが復活し、ワイワイやっているという報道。両方あるけれど、その切り取りでそれだけでは町の実情は伝えられません。仮設住宅のインタビューで2時間回しても、映るのは5秒だけ。言いたいことは、なかなか伝わりません。
しかし、これから先は、現地が伝えたいことをマスコミにしっかり切り取ってもらえるようにすることも必要だと思っています。

とにかく人が欲しい

影山:
でも復興は確実に前に進んでいるのですよね。やっていく中でも課題は多いと思いますが。
藤田:
富岡町復興委員会の産業再生創出部会で仕事をどうしていくのか、誘致は、どうやってやったら良いかを議論していました。まだまだ働く場所が必要ですので良い企業に来てほしいと思っています。また、双葉郡などの12市町村では、復興に向けての補助金制度が充実しているのでいろんな人が事業をやろうとしていると思います。ただ、地域の実情を理解せず事業を始めても、うまくいかないのではないかと思っています。地域とのミスマッチですぐにやめてしまうのではないかという心配があります。しかし、地域の住民だけではごはんは食べていけません。外から来る人にも魅力ある街づくりをしていかなければならないと思います。行政も補助金に加え、固定資産税の優遇など考えてほしいと思います。外から来た人が富岡の住民を雇い、生産し、それを売って、富岡の外の地域の金(外貨)を稼ぐようになることが必要と思います。
こういうことをどんどんやっていく必要がありますが、人手が不足しています。大きな絵を描いてくれる人はいますが、その実際のプレーヤーと管理者がいません。現場で汗をかく人がいないのです。ぜひそのような仕事を手伝ってくれる人に来てほしいです。
双葉郡はチャンスのある場所だと思います。復興の仕事は、人生をかけてやる仕事と思います。復興が身近に感じられることなんて他にないでしょう。自分のやったことが復興にどうつながるかそれが実感できる場所です。ぜひ来ていただきたい。

あとの世代の人につなげていく

影山:
私も積極的にPRしたいと思います。
藤田:
安全かどうかを議論するのは私たちの仕事ではなく、その道の人にまかせるべきと思います。ダメという人はずっと言い続けますし、説得しようとしてもダメです。私たちはあきらめないで、この地を次の世代につなげていきます。
やる人はやるし、文句を言う人は文句を言うだけです。でも、やるしかないです。あとの世代におじいちゃんはこんなに頑張ったよと言いたいです。

バカにされても夢を語り続ける

影山:
藤田さんの気持ちが伝わってきます。
藤田:
私ももう47歳なので、次の世代にバトンを渡していかなければなりません。水酔会という水曜日に30代40代の人が飲んでバカ話をする会をやっています。こうやって欲しい、こうやったら良いというのをずっと話し合ってきました。今後もみんなで考えていけば良いと思います。
イノベーションコースト構想を双葉郡にメリットがある形で根付かせてほしいと思っています。ロボット、空飛ぶ車など夢物語を言い、取組みを進めてほしいです。馬鹿にされることを言い続ける人が必要と思います。

「食」を通じて地域の活性化を

影山:
藤田さんはこれからどうしようとされているのですか。
藤田:
福島第一原子力発電所大型休憩所のコンビニや富岡町のさくらモール内の店をしっかりやっていきます。さくらモールの店は、もっと味を良くしてもっと食べてもらえるようにします。そとに打って出るような味に仕上げたいです。街づくりを進め、町に人を引っ張ってきます。食を通じて地域の活性化を進めていきます。
影山:
ぜひ応援したいです。最後に東電は、いろいろな意味で復興のキーになる会社と思いますが、東電へのコメントがあればお願いします。
藤田:
私は地域を復興したいと思っています。そのためには、福島第一原子力の状況が大変大きいです。ぜひ、東電の皆さんには廃炉を着実に進めていただくことと、復興に向けたありとあらゆる最大限の努力を続けて欲しいです。一緒にやっていきましょう。


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