気候変動問題は大統領選の大きなテーマ?


国際環境経済研究所所長、常葉大学経営学部教授


 2月初めの米国出張時にテレビで大統領選の特集番組を見ていたところ、「大統領選挙の際には、エネルギー問題を考えて投票しましょう」と訴えるコマーシャルが流れた。スポンサーがよく分からなかったが、後ほど米国の研究者に尋ねたところ石油業界などがスポンサーになっているとのことだった。
 エネルギー問題に関しては、キーストーンパイプライン、シェール採掘の是非など多少話題になる争点もあるが(キーストーンパイプラインに関しては、民主党候補者は反対、共和党候補者は賛成と色分けははっきりしているが、ニュアンスは候補者により異なる)、話題にならないのは気候変動問題だ。研究者に尋ねると、20程ある大統領選の争点のうち気候変動問題は、最も関心をひかないテーマの一つとのことだった。
 2015年11月16日から19日にかけ行われたワシントンポスト紙とABCニュースによる世論調査では、5点挙げられたテーマから最も重要な問題を選択する調査の回答は以下の通りであり、挙げられた5点以外に重要なテーマがあるとした人の比率は1%にしか過ぎない。

経済問題 33%
テロの脅威 28%
ヘルスケア 13%
移民問題 10%
税制 5%
上記のうち2つ以上 9%
上記以外 1%

 オバマ大統領は気候変動問題が最も重要なレガシー(遺産)になるとして注力しているが、世間の関心はそこにはないということだ。ただ、気候変動問題に関心を持つ米国人は増えてきている。さらに、気候変動問題は人為的な活動により発生したと考える人も増加傾向にある。
 それでも、気候変動問題が大統領選の大きな関心にならないのは、党派による意見の相違だけで党派内の意見の相違がほとんどなく、共和党、民主党それぞれの候補者を選択する予備選挙の段階ではテーマとして取り上げる価値がないためと思われる。
 上記の世論調査では、「科学者は温暖化問題が発生していることについて、一つの意見に同意していると思うか、それとも科学者間で大きな意見の相違があると思うか」との設問がある。オバマ大統領は、「科学者間では人為的な原因で温暖化が発生しているとの意見の一致があり、その対策は急務」と述べているので、意見の一致があることは多くの米国人にとっては周知の事実のように思われるが、アンケート結果は次だった。

大半が同意 43%
意見の相違あり 51%
意見なし 6%

 民主党のヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースは、気候変動対策に力を入れるべきとの立場だ。一方、共和党の候補者は、マルコ・ルビオを除き温暖化は起こっていないとの意見だ。ルビオだけは、最近温暖化は発生していないに意見を変えたが、かつては温室効果ガスの排出規制に賛成する立場だった。
 2015年3月に発表されたギャラップの調査による民主党内リベラルと共和党保守の温暖化問題に関する理解の違いは図の通りだった。立場の違いは明白だ。党派間の意見に明確に差がある温暖化・気候変動問題は大統領選の本番になれば、討論のテーマとして取り上げられる可能性も高い。もし、サンダースが民主党の大統領候補となれば、原子力発電も注目されることになるかもしれない。今の両党の候補者中サンダースのみが原子力発電に反対している。
 今後、エネルギー・温暖化問題がテーマとして浮上し、討論対象になることがあるだろうか。民主、共和両党の候補者次第だ。

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