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高効率石炭火力発電所への融資規制は温暖化防止に逆効果だ


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院 教授


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 それでは高効率石炭火力への融資が禁止されたら何が起きるのか。これも答は明らかだ。中国製の低効率な石炭火力発電が世界中に売られることになる。中国では石炭火力製造が過剰設備状態になっており、2009年頃から石炭火力設備の輸出ドライブをかけており、2013年までに発電量ベースで6倍に拡大した。それを支える可能性の高いのが中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)だ。2014年12月3日付け朝日新聞で中国国際経済交流センターの王軍氏は「中国にとっては(AIIBは)国内の過剰生産の問題とも関連している。AIIBを通じ、国内で過剰に生産されている鉄鋼などの製品を海外で消化できる可能性がある」と述べている。多国間開発金融機関やOECD輸出信用アレンジメントが高効率石炭火力への融資や公的信用を差し止めても、AIIBが低効率の中国製石炭火力発電技術の輸出を金融面で支援することとなろう。AIIBでは中国が最大の出資国となり、重要事項では拒否権も有する。中国の意向が相当程度働くものになることを考えるべきだ。

 この問題を突き詰めて見れば、途上国の今後の発電構成のベースラインをどこに置くかということに帰着する。放っておいても脱石炭火力が進み、ガス火力や再生可能エネルギーが主流になるのであれば、いかなる石炭火力技術の輸出もCO2排出増につながるだろう。他方、放っておいたら低コストだが低効率の石炭火力技術の導入が進むということであれば、高効率石炭火力技術の輸出によりCO2排出増を抑えることができる。間違いなく後者が現実的な見方だ。IEAの石炭火力拡大見通しをベースに、アジアの非OECD諸国において亜臨界石炭火力のみが拡大するケースと徐々に超々臨界石炭火力に移行するケースを比較してみると、2035年には10億トンものCO2を削減することができる。

 IEAは2014年の世界エネルギー見通しにおいて、「仮に全世界の石炭火力発電設備が超々臨界の効率を達成すれば、2040年の石炭火力発電由来のCO2排出量はNew Policy Scenario よりも17%小さくなる。石炭火力発電を新設する場合、より高効率なプラントの方がライフタイムコストより小さい場合であっても、投資者が常に最高効率のプラントを選ぶとは限らない。このような投資判断は資金が限られる場合になされる。より高高率なプラントは総じて建設コストが高いからである。炭素価格が設定されていない場合や、安い石炭が入手可能な場合は、低効率であってもより建設コストの低いプラントが魅力的になる。」と述べている。まさしくそういうことであって、多国間開発金融機関やOECD輸出信用ガイドラインで高効率石炭火力への融資を封印すれば、「悪貨が良貨を駆逐し」、安価で低効率なプラントが増え、結果的にCO2排出削減の機会を失うことになる。

 日本はこうした考え方に立ち、高効率石炭火力への融資規制に反対している。現実を無視した原理主義的な議論に対し、敢然と反論し、経済成長を確保しつつ、排出削減を進めるような現実的な議論を主導することは、日本の重要な責務であろう。

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