2011年8月のアーカイブ

  • 2011/08/19

    再生可能エネルギー促進法は理解されたか?

     安全・安心な社会の実現には、リスク評価やリスク管理を適切に行うことが欠かせない。さらに、社会がリスクと向き合っていくためには、リスク評価やリスク管理にかかわる情報をあらゆるステークホルダーが共有し、対話を通じた信頼関係のもとに問題解決の道筋を共に考えるリスクコミュニケーションが必要となってくる。

     このリスクコミュニケーションという手法は新しい概念ではなく、危険物質を扱う事業者やそれを管理する行政機関の多くは、すでに取り組んできたものだ。説明と対話で理解を深めつつ、社会的意思決定に向けてコンセンサスを形成することは、危険を扱ううえで当然のプロセスといえる。

     一方で事故などの緊急時には、とにかく目前の危機を回避することが優先される。危機の最中には、普段よりも判断力が低下する人が多くなって当然だし、社会的混乱の恐れもある。このため、多少一方的であっても明確でぶれない情報伝達が必要となる。説明や対話など、コンセンサス形成のプロセスが省略されることもしばしば生じる。しかし、あくまでも緊急時の対応であり、目前の危機を回避するためには有効な面があるが、恒常化すべきものではないだろう。

     このような場合には、緊急事態が落ち着いた後には、平常時にも増してリスクコミュニケーションが重要となる。福島第一原子力発電所の事故をみても、これから先、現実問題として放射線防護措置と生活の質との折り合いをつける必要があるが、その際には、リスクの理解と対話によるコンセンサス形成が重要になろう。

  • 2011/08/18

    ポスト京都に向け、次の手を探る欧州

     欧州が、ポスト京都に向けて新しい動きを見せている。本稿では、2009年の第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)から今年初めまでの欧州の状況を簡単に振り返った後、欧州の動向について、あくまで筆者の個人的見解であるが解説を試みたい。まだ欧州歴は浅いものの、欧州産業界の議論に直に接している者の見方として、多少なりとも参考にして頂けたら幸いである。

     筆者が2010年1月にブラッセルに赴任してから1年半たった。赴任後すぐに、欧州の気候変動政策研究者の話を聞いた際、想像以上に悲観的な彼らの見方に驚いたことを今でも思い出す。京都議定書の延長線上に、米国や途上国を含めたグローバルCapを設置し、グローバルCap & Tradeに世界が進んで行くことを真摯に期待していたEU(欧州連合)の気候変動政策担当者にとって、COP15での挫折は想像以上に大きなものだったようだ。その後、米国のオバマ政権に期待をかけ、米国がCap & Tradeに進むことに一縷の望みを抱いていたようだが、その望みも昨秋には、少なくとも当面の間、絶たれてしまった。

     産業革命以降の温度上昇を2℃以下に抑制するという450ppm目標に基づき、グローバルにトップダウンで排出削減目標を設定していこうというEUのアプローチは、地球規模で法的拘束力のある総量Capを設定できなくなってしまった以上、説得力を失いつつある。世界の二酸化炭素(CO2)排出量の1割強でしかないEUが単独で2℃目標に突き進んだとしても、実質的な効果がどれだけあるか疑問視する意見が、EU域内で増えつつあるようである。こうした動きを受けEUは、2℃に替わり、EUの政策を正当化するための新たな理念を模索しだした。しかし、この転換は簡単には進まぬまま、従来の慣性で動いているようにも見える。もちろん、新しい理念を打ち出したとしても、再生可能エネルギーの導入や省エネによる域外からのエネルギー輸入の低減、イノベーションの促進など、実際の行動にはあまり大きな変化はないとみられている。

  • 2011/08/17

    日本の石炭火力発電技術が温暖化を抑制する

     国際エネルギー機関(IEA)は、毎年、主要国の電源別発電電力量を発表している。この2008年実績から、いくつかの主要国を抜粋してまとめたのが下の図だ。現在、日本人の多くが「できれば避けたいと思っている」であろう順に、下から、原子力、石炭、石油、天然ガス、水力、その他(風力、太陽光発電等)とした。また、“先進国”と“途上国”に分けたうえで、それぞれ原子力発電と石炭火力発電を加算し、依存度の高い順に左から並べた。

    2008年度主要国の電源別発電電力量

    2008年度主要国の電源別発電電力量

    世界の発電電力量の4割を石炭火力が賄っている(出典:IEA/ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES(2010Edition),ENERGY BALANCES OF NON-OECD COUNTRIES(2010Edition)から筆者が作成)

     この結果を見ると、どの国も原子力と化石燃料を加えると80%を超える。また、化石燃料のうち、石油は少なく、石炭と天然ガスが大部分を占める。国によって両者の比率は大きく異なり、天然ガス資源が比較的手軽に入手できる国では当然ながらガスの比率は高い。しかし注目すべきは、石炭の占める割合が、主要途上国だけでなく米国やドイツでも40%を超えており、世界全体で4割を占める最大の電力源だということである。なお、「その他」に分類されている太陽光や地熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、各国とも強化すべき電力源と位置づけてはいるが、基盤電源とするためには、技術開発の加速による飛躍的な効率向上等によって大幅なコストダウンを実現することが必須であろう。

  • 2011/08/09

    東北経済復興と地球温暖化~復興と防災国家構築と~

     東日本大震災の発生以来、5カ月近く経過したが、東北経済の復興が目に見えて進んでいるようには感じられない。いまだに現地では瓦礫の処理が滞っている。復興の実感は、瓦礫を撤去して、そこに新しい家が建ち、周辺一帯に電気やガス、水道などのユーテリティーが回復して、はじめて湧いてくるものではないだろうか。 続きを読む