2011年7月のアーカイブ

  • 2011/07/28

    二項対立の構図がエネルギー政策を停滞させる

     エネルギー政策に関して、私のfacebookで、2回のアンケートを行った。1回目は、2011年6月23日から7月6日まで、「政府の提唱するエネルギー政策(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思うか?」という問いを投げかけ、2回目は、7月14日から7月20日まで、「総理の脱・原発依存宣言をどう思うか?」という問いを投げかけた。

     結論は、図1、図2の通りであり、どちらの結果を見ても、過半数の回答者が「原発依存からの脱却」を望んでいることがわかる。新聞等での調査結果より、その割合が多いのは、ネットユーザーによる特徴があるのかもしれない。しかし、原発依存からの脱却を望む回答者たちも、「即座に原発を止めるべき」という人は多くない。図1の「三本柱で進める」に投票した人の75%は、段階的に原子力発電の割合を減らしていくことを求めている。マスメディアでありがちな、「脱原発=即原発全停止」のようなヒステリックな意見ではないのである。このアンケートに答えてくれた人々をベースに見れば、マスメディア的な二項対立に陥り、思考停止している人ばかりではないことがわかる。メディアが政局と絡めてエネルギー問題を報道するために、国民の意思を見えなくしてしまっているのではないかとも思えてならない。

    図1
    政府が提唱するエネルギー政策の4本柱(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思いますか?

    図1 政府が提唱するエネルギー政策の4本柱(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思いますか?
    2011年6月23日~7月6日に、http://www.facebook.com/kumi.fujisawaでアンケートを実施。
    351件の回答を得た

    図2
    7月13日の菅総理の「原発に依存しない社会を目指す」という宣言、評価しますか?

    図2 7月13日の菅総理の「原発に依存しない社会を目指す」という宣言、評価しますか?
    2011年7月14日~7月20日に、http://www.facebook.com/kumi.fujisawaでアンケートを実施。
    294件の回答を得た
  • 2011/07/21

    再生可能エネルギーの正しい導入方法を考える

     菅直人首相が退陣の条件の一つにした、再生可能エネルギー促進法案が国会で可決されそうである。これは、風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーからの電力を固定価格で10年以上の期間にわたり購入するというものだが、現在の形ではかなり問題のある法案だ。私は、7月9日に放送されたNHKの「週刊ニュース深読み」で、賛成派の飯田哲也氏と法案を議論する機会があったが、時間切れになり、すべての論点について議論することができなかった。そこで、この場で二つの論点を示しておきたい。

    【電力料金の値上がり額】

     電力の固定価格買い取りに要する費用は、電力料金の形で電力の需要家が負担する。この結果、電気料金は値上がりする。値上がり幅は、買い取り価格と買い取り電力量により決まることになる。値上がり額によっては、国民生活と産業活動に大きな影響が生じる。では、値上がり額はいくらになるのだろうか。

     再生可能エネルギーごとの買い取り価格と導入量を以下の表のように仮定し、2020年の買い取り価格総額を計算してみた。

     現在の再生可能エネルギーの導入量は、太陽光発電が300万kWから400万kW、風力発電が300万kW弱、地熱発電50万kW強程度と推定されている。上記の仮定通りに進めば、設備導入量は一挙に増加する。半面、設備量の比較では日本の全電源の20%を占めるようになるが、発電量では全体の5%程度に止まる。一方、仮定通りに進めば、2020年の固定価格買い取り制度に基づく負担の総額は1兆1000億円を上回る。標準家庭の追加負担額は年間4000円強、月に25万kWhを消費する中規模工場での追加負担額は年間約360万円となる。

    【系統安定化費用】

     安定的に発電できない太陽光や風力発電を導入するには、送電系統を安定的に運用するための送電線能力の増強とバックアップ電源が欠かせない。しかし、仮定したような大量の太陽光、風力発電を導入するには、送電線能力の増強だけでは不十分だ。このため、蓄電池の導入により系統の安定化を図ることが必要となる。

     3500万kWの太陽光発電設備導入時に必要な系統安定化費用については、経済産業省次世代配電ネットワーク研究会が検討を行っており、費用は2兆~24兆円とされている。この費用負担は、2020年時点の全需要家平均でkWh当たり0.46円から5.46円になる。買い取り価格の負担に加えて、標準家庭で年間1600円から2万円弱の追加負担が数年間にわたり発生する計算になる。

  • 2011/07/15

    正統な競争力を付与する仕組みが最も重要に

     原発が限界化して行くと火力がさらに主流化し、その結果、化石燃料の新規購入で数兆円のコストがかかり、電気代に跳ね返ると云う議論があります。ある程度そうでしょう。しかし、現行の総括原価主義や地域独占を見直したら、その分電気代の上昇は抑えられるでしょう。何しろ、日本の電力は外国のガス生産者や国内の調達参加者にとっては言い値で買ってくれる上得意なのですから。2011年6月の雑誌「選択」は、その悲劇的状況を論じています。国内調達で随意契約を禁止していない国は、日本ぐらいです。事情は違うにしても米国では各州の公益事業委員会がコストの外部監査をしています。給与も業界最低に抑えています。

     電力のような基幹商品は硬直的な価格体制から解放し、市場性をもっと導入するべきです。そういう姿勢を国が示すことこそ、日本経済の高コスト体質を和らげ、国民経済を擁護し、日本企業の国際競争力強化に繋がるのですから、そういう情報を提供し、国民の衡平な議論に供するべきです。そういう姿勢が生まれれば、「原発を止めるなら、これだけ莫大なコストになるぞ」という単細胞的議論から均衡のとれた議論になるでしょう。

     自然エネルギー買い取り政策も同じです。この制度の結果、電力料金は上がるでしょう。しかし、上がり方を独占排除などのいろいろな手段で緩和できるはずです。

     「国民よ、自然エネルギーの高価な負担に耐えられるのか?」といわんばかりの姿勢は、日本という国の品格としては情けないのではないでしょうか? 要するに「上がる、上げる」という議論をするなら「下げる、下がる」という議論も同時するのが、公益事業を今後どうするかというときに、絶対に必要だと思います。国民融和の下で健全で頑強なエネルギー政策を進めようとするなら、事情を知っている論者はこの均衡を国民に知らせるべきだと思います。

  • 2011/07/06

    エネルギー政策の見直しに向けて

     民主党政調の成長戦略PTのエネルギー政策有識者ヒアリングに呼ばれ、6月30日8時からプレゼンしてきました。民主党の中での「常識」と異なる点がいくつも含まれていたようで、出席議員の方々からもさまざまな質問を受けました。

     中でも、次のような質問が印象に残りました。

    質問:原子力国有化は難しいと(澤は)言うが、どのような根拠か。

    回答:国直轄の事業として、原子力発電所を運営できると思えない
    国は、原子力から撤退しないのであれば、原子力賠償措置法における事故時のリスクをより積極的に取ることで関与を増やすべきだが、その政治的意思が見えない。それゆえに国有化議論を一回はこなす必要がある。

    質問:電力供給工程表作成は賛成だが、供給力だけではなく、需要についての綿密な見通しが必要ではないか。これまでの電力会社の見通しは当たった試しがない。

    回答:確かに、需要想定については、これまで機械的に設定してきていたが、これから数年の間は需要見通しについて、相当きめ細かく積み上げる必要がある。また料金オプションとしても、需要の弾力性を高めるような仕組みを検討すべき時期。

    質問:自然エネルギーを増やすための固定価格買取は必要だし、イノベーションも期待できる。

    回答:原子力も政治的意思と資金注入を長年やって初めてここまでのシェアを得るようになった。風力にしても太陽光にしても、立地地域における抵抗はだんだん大きくなると思われる中、長年にわたって政治的・財政的資源をつぎ込み続ける覚悟はあるか。さらに固定価格買取は、参入事業者間に競争を促進するスキームではなく、新技術を開発するインセンティブがない。

    質問:化石燃料確保が重要というのは同意する。しかし、コストはアップする。具体的にはどのように対処すればよいか。

    回答:ユーザーとして大規模であることが重要な交渉力になる。また外交的にも戦略的に立ち回る必要があり、政府がもっと前面に出る必要がある。コスト的には、今後主流になると思われる天然ガスの調達契約を日本に有利なものとし、価格を低減していくことが戦略目標になる。

     昨今の政府のエネルギー政策について批判的な姿勢を取っている筆者をヒアリング対象に呼んでいただき、じかに与党議員の方々にお話しできる機会が与えられたため、その点は非常にありがたいと思いました。こうした機会は、筆者にとってもさまざまな見方や関心に触れるいいチャンスとなりました。

     今後ともこうした場があれば、またこのWEB上でご報告します。

    資料:成長戦略PT資料(エネルギー政策の見直しに向けて)(PDF)

    記事全文(PDF)