2011年3月のアーカイブ

  • 2011/03/25

    50年後を見据えた世界のエネルギー・気候変動問題の解決策を

     今日、経済のグローバル化、資源価格の上昇、新興国の急成長、気候変動問題への対応など、世界の経済社会を取り巻く環境が大きく変化しています。この「不確実性」の時代に、国際エネルギー機関(IEA)は、50年後も見据えて世界が発展を続けていくためのエネルギー・地球環境政策のあるべき道筋は何か、各国の政府や企業のよりどころとなるベンチマークを発信することに務めています。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)が地球温暖化対策への羅針盤たらんと、分野を超えて有識者の議論を促進し提言を発信していくことは時代の要請に応えるアクションであり、IEAと方向を一にする活動だと思います。

     昨年11月にIEAが発表した「世界エネルギー展望2010」では、各国がエネルギー・気候変動政策を慎重に展開する現実的な道筋を「新政策シナリオ」として新たに示したのですが、中国をはじめとする新興国の成長に伴い、2035年までに世界のエネルギー消費は36%増加し、二酸化炭素(CO2)の排出量も21%増加すると見込まれます。しかしこれは大気温が3.5℃上昇することを許し持続可能とは言えないうえに、石油輸出国機構(OPEC)からの石油生産に対する依存度が現在の4割から5割に上がるなど、エネルギー安全保障面でのリスクも増大してしまいます。

  • 2011/03/14

    地球温暖化に保険の考え方は適用できるか

     大学で担当している「環境政策論」の授業の一環として、アル・ゴアの「不都合な真実」を学生に見せてコメントを書かせた。学生のコメントで多かったのは、「映画では海面が6m上昇すると言っていたが、授業で学んだことと違う」というものであった。

     授業では、「海面上昇はあっても、21世紀末で数十cm程度だろう」と教えている。6mの海面上昇がすぐにあるかのような映画の説明に、学生は違和感を抱いたようだ。学生からは次のような質問もあった。
    「映画では、ハリケーン“カトリーヌ”は温暖化が引き起こしたと言っていたが、大きなハリケーンは昔からあったのではないか」
    というものである。確かに、何かがあるたびに、すべて温暖化が引き起こしたというのは無理がある。

     地球規模で発生している問題については実証が難しい。二酸化炭素などの温室効果ガスは、実際に温暖化を引き起こしているのだろうか。この答えを知ることは、実は難しい。実験室では温室効果を示すガスが、地球規模でも同様のことを引き起こすかを証明することは困難だ。地球の気候を変える要素は太陽の活動をはじめ数多くあるからである。

     このために、温暖化問題については、多様な意見が表明されることになる。アル・ゴアの対極には「温室効果ガスは温暖化を引き起こしていない」という意見もある。温暖化懐疑派と呼ばれる人たちだ。

     どちらの意見が事実に近いのか。その答えを知るのは100年後、あるいはもっと後かもしれない。それならば、今、われわれはどうすれば良いのだろうか。温室効果ガスが温暖化を引き起こしていると断定できない以上、何も対策をしなくて良いのだろうか。経済学ではリスクがある時にどう考えるのだろうか。

  • 2011/03/10

    あなたは情報発信しているか?

     日本からの情報やアイデアの発信の必要性が叫ばれてから久しい。しかし、状況は思ったほどには改善していない。例年2月に開催されるダボス会議(世界経済フォーラム)には、今でこそ、日本の首相も日帰りに近い形ででも出席するようになった。だが、単にそこで話してくるという以上の積極的な意味は見いだせない。そもそも1年で替わる首相の話など、誰も真面目に聞かないだろう。

     1980年代初頭の日本の絶頂期であれば、どんなに下手な英語で話をしても、相手は日本の言うことを聞きもらすまいと一生懸命だった。それは、背後に経済大国日本に対する尊敬と脅威があったからである。世界に対する日本の影響力、あるいは日本に対する世界の関心が目に見えて低下しているなかで、日本からの発信は、よほど内容が充実していないと誰も聞いてくれない。まず、こうした状況認識の共有が必要だ。

     これに関連して筆者が残念に思っているのは、未だに残る欧米信仰である。たとえば政府の審議会での議論で常に出るのは、「EUでは排出権取引(ETS)を導入しているのに日本はなぜやらないのか」とか、「スペインやドイツで再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入して『成功』しているのに、なぜ日本は追従しないのか」という議論である。

     この発想を引きずっているのが日本から海外への調査団である。同じようなテーマについて、顔ぶれを変えながら欧米に大規模な調査団を送る。このなかには、英語ができずに議論に加われない人もいる。ときには日本大使館員も動員されて、ご苦労なことである。情報発信どころか受信専用である。

     相手から見れば、毎回同じような質問を受けるだけで見返りはない。もし筆者が相手の立場であれば、時間の無駄であるので真面目な対応をしないだろう。真面目にやるのは、たとえば日本にEU-ETSを採用させる意図があるような場合だけである。