2010年12月のアーカイブ

  • 2010/12/22

    日本がリードするプラントの効率算定方法標準化

     製鉄所をはじめとしたプラントの効率を測ることは、そのこと自体は単純なものである。システムバウンダリー(システム境界)を決めて、その境界を出入りするエネルギーや物質の量を計上し、それぞれの物質に見合った換算係数をかける。そこで得られた数値を足せば総量であり、総量を生産量などで割れば原単位となる。

     しかし、システムバウンダリーの決め方や換算方法が異なれば、まったく同じプラントを対象にしても、無数の「効率値」が得られることになってしまう。そして実際には、各国ごとだけでなく、同じ国のなかでも、プラントの効率を測るための複数の算定方法が存在している。

     鉄鋼業の場合、より広い範囲でお互いの効率を比較することによって自らの位置付けを知ることが効率改善に有効である。そこで、日本の鉄鋼業界がリードして、共通の効率算定方法の構築を進めてきた。クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)での成功を基に世界鉄鋼協会(ワールドスチールアソシエーション)でも算定方法を確立し、データ収集を行ってきた。そして日本が提案者となって、世界鉄鋼協会の効率算定方法をISO規格化する作業がスタートしている。

     APPや世界鉄鋼協会のときもそうであったが、ISO規格化にあたっては各国・地域の事情がより色濃く出てくるため、なかなかタフな仕事となる。特にEU ETS(欧州連合域内排出量取引制度)を抱えている欧州とは、今後もハードな交渉が続くことは避けがたい状況である。しかし、生産技術・製品特性とともに、技術に裏付けされた日本の効率算定方法は、世界に貢献できることは間違いない。もちろん、国際化のなかでカラー道着が採用された柔道のように、日本の効率算定方法もある程度の修正が必要になるかもしれないが。

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  • 2010/12/17

    2011年に向けて新しい議定書案の提示を

     温暖化交渉で今回ほど日本が脚光を浴びたのは、京都議定書ができた1997年の第3回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)以来ではないか。そう思わせるほど、メキシコ・カンクンで開催されたCOP16では日本の話題で持ちきりだった。理由は、会議開催の冒頭、日本は京都議定書の第二約束期間の設定をしないと啖呵を切ったからだ。

     いつまでも削減義務から逃れようとする途上国、排出量取引市場の市況を維持しようとするEU(欧州連合)が京都議定書の延長に傾くなか、日本は「(米国や新興国が削減義務を負わない)京都議定書では温暖化を防げない。新たな枠組みを考えるべきだ」と主張した。

     これまで、日本外交のひよわさに辟易していた産業界のなかには、こうした毅然とした日本政府の交渉態度に胸のすく思いをした人も多かったであろう。現地、カンクンでも
    「よくぞ言ってくれた」
    という評価が大半だった。日本政府は期間中、さまざまな国と二国間会談を行って、日本の立場に同感してくれる“友好国”を増やしていく努力を続けた。

     その甲斐あって最終合意では、日本の立場が相当盛り込まれた決定となり、さらに昨年のコペンハーゲン合意の諸要素を盛り込んだ文書が、米中も入る形で正式に採択された。ここまでくれば、産業界としても快哉を叫びたくなるであろう。

  • 2010/12/15

    「発展途上国」中国と「大国」中国

     新聞やテレビで中国関連のニュースを見ない日がない。尖閣列島の中国漁船事件、アジア太平洋経済協力(APEC)の日中首脳会談における胡錦涛国家主席のニコリともしない表情を見て、中国は「大国」になったと感じた人も多いだろう。 続きを読む

  • 2010/12/10

    3つの視点から気候変動問題を巡る国際交渉を考える

     気候変動問題についていろいろと考えるときに、どうしても頭から離れないいくつかのことがある。問題が深いと言わざるを得ない。列挙してみたい。

    【身勝手】
     数年前に、ブラジルが「歴史的責任(Historical Responsibility)」を気候変動に関する国際連合枠組み条約(UNFCCC)の場で主張したことは記憶に新しい。過去も同様の考え方が主張され、「差異あるが共通の責任(Common but Differentiated)」という概念で共有化されている。

     しかし、国民1人当たり3万ドルを超える豊かさを享受している日米欧が、いまだその3分の1にも達しない中印に対して、気候変動問題に厳しく対応しろと要求している。これは、いかに気候変動問題が深刻な問題であるとしても、やはり、先進国の身勝手な要求と言わざるを得ないのではなかろうか。さんざん化石エネルギーを活用して豊かになってきた国々が、過去自分たちの辿った道に思いを馳せもせず、これから豊かになろうとする国々に、化石燃料を利用するなと言っているのだ。

    【植民地】
     国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の場では、アフリカや中南米の人たちが見事な英語やフランス語を駆使して多様な意見を主張している。なかには、自らの足元を忘れたかのようにして、欧州の人たちと同じ意見を述べる人もいる。これはどうしたことなのだろう。ここで気がつくのは、かつての植民地と宗主国の関わりである。かつての宗主国は、教育と文化を通じて、いまだにかつての植民地国のリーダーの一部に彼我一体ともいえる影響を及ぼしているのだ。欧州の巧みなかつての統治は、今、こんな形で、現れている。

  • 2010/12/10

    京都議定書は問題解決を遅らせる
    日本は実質的な排出削減で世界に貢献を

     温暖化対策を巡る国際交渉が難航している。もめている原因は、先進国と途上国の対立だ。

     下の図を見てほしい。今後数十年にわたって二酸化炭素を排出する量が急増するのが途上国、特に成長著しい中国などの新興国である。温暖化をストップさせるためには、こうした新興国の排出削減に向けた協力が不可欠だ。

     一方、新興国から見れば、温暖化は今の先進国がもたらしたもので、責任は先進国にある。現在の先進国は、これまで石油や石炭などの化石エネルギーを大量に使って経済成長してきた。だから、その結果排出された二酸化炭素によって引き起こされた温暖化問題は先進国の責任であって、まずは先進国が排出を削減する義務を負うべきだという論理である。新興国にとってみれば、これから経済成長する権利があるのだから、エネルギーの使用量を削減するなど考えられない。

     今の京都議定書は、そうした主張に配慮して、先進国だけが削減義務を負う取り決めになっている。しかし、京都議定書は1997年、すなわち今から10年以上前にできたものである。中国だけを見ても、そのころに比べて経済力や生活水準は格段に伸びており、国際事情は大きく異なっている。

    途上国からの二酸化炭素排出は増え続ける
  • 2010/12/10

    国際環境経済研究所を設立いたしました

     環境保全と持続可能な開発の実現のため、1992年に地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)がブラジルで開催され「国連気候変動枠組み条約」が採択されました。

     その後、第3回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が京都で1997年に開催され、「京都議定書」を議決、限られた国に対し大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ、地球温暖化対策を加速させる目標が設定され活動がスタートしました。わが国においても市民や企業、研究機関、行政などさまざまな部門で対策が実施されています。

     その結果、2008年度のわが国の温室効果ガス排出量は、京都議定書基準年の1990年と比較し1.6%の増加にとどまっています。1990年から2008年の実質GDP伸び率が23.8%だったことを考慮すると、各界の省エネ努力の成果が反映された結果と言えます。特に、産業部門では6.4%減少しており、景気変動や国内工場の海外移転などの影響だけでなく、省エネ活動等の地道で積極的な努力が表れた結果と言えます。

     一方、国会では、地球温暖化対策基本法案が審議されようとしています。同法には、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%、2050年には80%削減という実現の道筋が見えない目標設定や、環境税の導入、国内排出量取引制度の創設などが明記されています。

     これらの政策は、「すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的な枠組みの構築」に矛盾し、国民生活に与える影響、産業の海外移転加速に伴う雇用の流出、経済成長への阻害など、さまざまな課題を含んでいます。

     わたしたちは、地球温暖化対策への羅針盤となり、人と自然の調和が取れた環境社会づくりに寄与することを目指し、国際環境経済研究所(International Environment and Economy Institute)を立ち上げました。人類共通の課題である地球温暖化対策における、環境と経済の両立と経済社会のあり方に同じ思いを持つ幅広い分野の人たちが集まり、情報を発信します。

     また、地球温暖化問題の解決に向け、多様かつ適切な方向性を示すための情報収集と提供を行い、この問題に関する調査研究成果をもって、政府・自治体・研究機関・市民などに働きかけてまいります。これらの活動を通じて、わが国の産業が強さを取り戻し、それを支える環境技術開発がさらに進み途上国など海外に技術移転されることで、世界規模で温暖化防止対策が進む弾みになることも期待しています。

     メンバーは、産業界、研究機関、行政、NPO、メデイア等で地球温暖化対策の分野で活動した者、または活動している者のなかで、経済・産業・エネルギーの視点で情報を収集しながら論考を発信する機会を求めている幅広い分野の人たちで構成されています。

     今後、各メンバーが書き起こした解説記事や報告、意見などを多くの皆様にお届けできるようインターネットを通じて発信してまいります。わたしたちの活動にご期待ください。

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