気候カルトの終焉
長く、贅沢な旅だった

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Matt Ridley
監訳 杉山大志  訳 木村史子
本稿はマット・リドレー
https://spectator.com/article/the-end-of-the-climate-cult/
2025年12月8日を許可を得て邦訳したものである。

ようやく、ありがたいことに、地球温暖化の狂乱は終わりつつある。モンティ・パイソンの言葉を借りれば、気候危機と叫びつつけるオウムは、ブラジル・ベレンで開催された最近のCOPサミットや、あるいはハーバード大学や、CNNテレビの報道といった止まり木に、まだ何とかしがみついているかも知れない。だがそれ以外では、もはや死んだも同然である。それは創造主のもとへ旅立ち、息を引き取り、この世の命を終え、幕を閉じ、あの世の聖歌隊に加わったのだ。化石燃料削減に合意できなかったCOPは、成果ゼロどころかマイナスだった。会場はまさに火災に見舞われ、空調は故障し―参加者は到着時に「トイレットペーパーを流すな」と通達された。ビル・ゲイツが気候慈善団体の政策・提言部門を閉鎖した後、「地球温暖化は人類の滅亡にはつながらない」と認めた最近の弁明は、まさに棺桶に打ち込まれた最新の釘に過ぎない。

10月、JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスに次いで、他の銀行も続々と脱退したため、ネット・ゼロ・バンキング・アライアンスは崩壊した。シェルとBPは株主たちの大歓迎の内に、再び石油会社へと回帰した。フォードは誰も欲しがらない電気ピックアップトラックの生産を間もなく中止する。そしてその他数百社が気候変動に対処するために設定された具体的な目標や基準を撤回している。さらにオーストラリアは来年のCOP開催を辞退した。

ワシントン・ポスト紙の分析によれば、気候変動問題を放り出したのは共和党だけではない。民主党もこの問題について語るのをやめ、昨年(2024年)のカマラ・ハリス陣営の大統領選キャンペーンではほとんど言及されなかった。気候変動は、スウェーデンの若者たちが抱える23件の課題リストでも、下位半分にまで順位を落とした。そして欧州議会でさえ、気候変動対策への貢献状況を報告する義務を課す規則から、多くの企業を免除する決議を可決したほどである。

これは長く、贅沢な旅だった。環境破滅を予測することは常に儲かる商売であり、補助金、給与、コンサルティング料、航空マイル、ベストセラー、研究助成金を生み出してきた。恐怖の的となるテーマは次々と入れ替わった:人口過剰、石油流出、汚染、砂漠化、大量絶滅、酸性雨、オゾン層、核の冬、精子数の減少といったものだ。証拠が曖昧になるにつれ、世間の関心が薄れるにつれ、あるいは法律や慣行の変更によって問題が解決されるにつれ、それぞれの脅威は色あせていった。

しかし、地球温暖化ほど大きく長く続いた恐怖は他にない。二酸化炭素排出が熱を大気中に閉じ込めるという破滅的な記事を私が初めてエコノミスト誌に書いたのは1987年、今から40年近く前のことだ。すぐに、その影響は現実のものだが、警鐘は過剰であり、フィードバック効果がモデルで誇張されていることに気づいた。温室効果は、人類存亡の危機というより、むしろ軽度の不便をもたらす程度に過ぎないだろうと考えた。しかしこの不敬な発言により、私は罵倒され、排除され、ブラックリストに載せられ、「否定論者」と呼ばれ、概して悪とみなされた。2010年、ウォール・ストリート・ジャーナル紙上で私はゲイツ氏と論争したが、彼は地球温暖化が大惨事にはならないという私の主張を嘲笑した。だからこそ、彼が私の見解に賛同するようになったのは嬉しい限りだ。

気候科学への理解がほとんどないまま気候変動議論を牽引した活動家たちは、将来の地球温暖化についてますます破滅的な情景を描くことで注目を集めようとした。吹雪も熱波も気候変動のせいにできるよう、彼らは呼称を「気候変動(climate change)」に変更した。その後、将来の温暖化予測が下方修正される中でも、彼らは「気候非常事態(climate emergency)」や「気候危機(climate crisis)」といった表現を強めていった。「今世紀中に60億人が犠牲となり、死と飢餓に直面する。これが科学が予測する事態だ」と、2019年にエクステンション・レベリオンを創設したロジャー・ハラムは述べた。しかし科学はそんなことを示していない。「気候変動が人類を滅ぼすと警告する一流の気候科学者がいる。今後5年以内に化石燃料の使用を止めなければ」とグレタ・トゥーンベリは2018年にツイッターで投稿した。しかし5年後、彼女はこの投稿を削除し、間もなくパレスチナ問題こそが注目を集め続ける有望な手段だと判断した。

科学者たちはこうした主張がナンセンスだと知っていたが、警鐘を鳴らし続けることで研究資金が流れ続けるため、見て見ぬふりをした。そしてジャーナリストは常に誇張を好むものである。また資本家たちは喜んで利益を得た。政治家たちは他者へ責任を転嫁する機会を歓迎した。つまり、山火事や洪水で町が壊滅しても、自らの備え不足ではなく気候変動のせいにすればよいのだ。警戒を誇張しないインセンティブをほぼ誰も持っていなかった。

過去の脅威とは異なり、気候変動への恐怖には未来形で提示し続けられるという特徴が存在する。今日の気候変動がどれほど穏やかであろうと、明日には必ずや大災害が訪れると主張できるのだ。こうして四十年もの間、気候変動警鐘論は長きにわたり制度機構を浸食し、報道機関・教育現場・経営陣を掌握していった。2020年までに、町議会であれスポーツチームであれ、二酸化炭素排出量について心配そうに議論しない会議は皆無と化した。気候危機の恐怖を生き続けさせたもう一つの要因は、排出量削減が不可能に近いほど困難だったことだ。酸性雨防止のための硫黄排出削減は比較的容易だったし、オゾン層保護のためのフロン禁止も同様だった。しかし何十年経とうと、二酸化炭素排出量は増加の一途をたどった。どれだけ資金や研究を投入しようとも、だ。さあ乾杯だ!

再生可能エネルギーへの転換は、文字通り、何の違いも生み出さなかった。データを示そう:過去10年間で世界のエネルギー生産量は風力と太陽光で年間9兆キロワット時増加したが、化石燃料では13兆キロワット時増加した。そもそも風力と太陽光が二酸化炭素を大幅に削減するわけでもない。その設備は石炭で製造され、間欠性を補うために化石燃料がバックアップとして使われているからだ。

数兆ドルもの補助金にもかかわらず、これら二つの「不安定な電源」が供給するエネルギーは世界のわずか6%に過ぎない。低密度・高コスト・間欠的な電力出力は、データセンターや電力系統には全く役立たず、輸送や暖房など言うまでもない。さらに、継続的な運転を妨げることで、新規の原子力・ガス発電所の建設・運営の経済性を事実上損なっているのだ。気候変動を懸念する者たちの間で、なぜこれほどまでにこれら不安定なエネルギー源を支持することが当然視されるようになったのか、その理由は理解しがたい。補助金依存症が大きく関与しており、熱力学に関する一般的な無知も相まってのことであろう。

気候変動への恐怖が薄れつつある今、主要な環境保護団体の中で非常口への緊急脱出が始まっている。寄付金は枯渇しつつある。一部は人工知能の恐怖をあおる活動へシームレスに移行するだろう。他はゲイツ氏に倣い「世界の終わりなどと言ったことはなく、解決すべき問題だと言っただけだ」と主張するに違いない。ごく一部は勝利宣言さえ試み、10年前のパリ気候変動会議での約束が排出量を十分に減らし地球を救ったと、説得力のない主張を繰り広げるかもしれない。

もちろん、気候変動について世界中に警鐘を鳴らし、そこから 3 億ドルの財産を築いた元副大統領のアル・ゴアも、ブラジルのジャングルで開催された最近の会議に出席していたのだが、その会議のため、彼らは森林を伐採してアクセス道路を建設したのだ。そして先週、ゲイツ氏が気候変動対策から手を引いたことを激しく非難し、ドナルド・トランプ氏に威圧されたと非難したときのゴアの様子は、第二次世界大戦が終わったことを知らなかった、ジャングルから出てきた日本兵のようにも見えた。

おそらく彼は今、地獄の炎や破滅といった誇張表現を多用したことを後悔しているだろう。ノーベル賞を共同受賞した2006年の映画『不都合な真実』で、彼は「近い将来」に最大20フィート(約6メートル)の海面上昇を予測したが、これは実際には約19フィート9インチ(約5.9メートル)ほど外れたのである。2009年には、北極海の氷が2014年までに75%の確率で消滅すると発言した。その年の氷の面積は500万平方キロメートルまでの縮小を記録したが、これは2009年とほぼ同水準だった。今年は470万平方キロメートルだった。サンダンス映画祭での上映時、ゴアは「今後10年以内に温室効果ガス削減の抜本的対策を取らなければ、世界は取り返しのつかない状況に陥る」と述べた。しかし今、19年が経過した。

ゴアの指摘通り、トランプ政権からの報復を恐れることが企業の撤退を促している側面は確かにある。トランプ大統領は既に3000億ドルのグリーンインフラ資金を削減し、政府ウェブサイトから気候変動関連の表現を一掃した。しかし仮に共和党が2028年に大統領選で敗北した場合でも、民主党が気候変動対策の気運を再び盛り上げるのは困難だろう。気候変動を深刻に懸念する米国民の割合は低下しているからだ。トランプが1992年の国連気候変動枠組条約から米国を脱退させた場合、再加盟には上院の3分の2の賛成票が必要となるが、これはほぼ不可能だろう。

コペンハーゲン合意の代表を務めるデンマーク人経済学者ビョルン・ロンボルグは、数十年にわたり気候変動の誇張に対して孤独な闘いを続けてきた人物だ。彼は最近、世論の変化についてこう説明した。「気候変動の破滅論があまりに耳障りなため、有権者の支持も薄れている。気候変動は現実の人為的問題ではあるが、メディアや活動家による絶え間ない『世界の終わり』的な主張は状況を著しく誇張している」と。

気候変動支配体制の崩壊における重要人物は、水圧破砕法によるシェールガス採掘の先駆者であり、今年トランプ政権でエネルギー長官に任命されたクリス・ライトである。ライトは5人の著名な学者による気候科学の検証を委託し、気候変動の実際の状況がいかに脅威的でないかを明らかにした:気温上昇は緩やかで、主に冬季の夜間や北半球で顕著であり、逆に夏季の日中や大多数の人々が暮らす熱帯地域では上昇幅が小さいこと、海面上昇は非常に緩やかで明確な加速は見られないこと、嵐の平均発生頻度や激しさには測定可能な変化がほとんどないことなどが示された。さらに、増えた二酸化炭素によって地球規模での生態系の緑化が進んでいることにも言及している。

先月ジャマイカを直撃したカテゴリー5のハリケーン「メリッサ」は約50人の命を奪った。地球温暖化以前の過去には、同様のハリケーンが数万人、場合によっては数十万人の死者を出していた。今年上半期の世界の気象災害による死者数はわずか2,200人で過去最低を記録した。一方、ガスや電気を利用できず薪火で調理する貧困層による室内空気汚染は年間300万人の命を奪っている。したがって、ロンボルグとライトの影響を受けたゲイツが「貧困層に安価で信頼性が高くクリーンなエネルギーを届けることが、はるかに緊急性の高い優先課題だ」と主張するのは正しいと言える。

情報筋によれば、ライトは国際会議でロックスターのように英雄扱いされているという。特にアフリカやアジアの閣僚たちは、排出量削減の強要ではなく、人々にエネルギーを届ける必要性について議論できること自体に感激しているという。西欧の閣僚のうち少数が嫌悪感を見せているが、その一部(英国を除く)でさえ、環境保護の理想主義から脱却する方法を見つける必要があると密かに認めている。

幸いにも、彼らは今やそのための便利な「隠れ蓑」を手に入れた。それは人工知能である。ドイツ人は非公開の場でこう語る。「風力や太陽光への補助金を続けたいのは山々だが、データセンターを運営するには、より信頼性が高く手頃な電力が大量に必要だ。だから今後はガス火力―場合によっては原子力―発電所を建設するつもりだ」と。

同様に、アメリカ西海岸のテクノロジー業界全体でも、気候変動への感情的な反応は、堅実な電力供給業者(主に天然ガス火力発電事業者)との契約締結の必要性、あるいはAI競争で取り残されるリスクと比べれば、贅沢な信念に映るように急変した。世界のガスがありあまっていることは、いくら強調しても足りない。フラッキング技術のおかげで、何世紀分もの安価なガスが得られるようになったからだ。テクノロジー業界の巨人たちは原子力にも参入しているが、これが追加の電力需要に対応できるのは次の10年に入ってからになる。だが今この瞬間に電力が必要とされているのだ。

気候変動の影響により、自然災害が激化し、頻発化するとする気候危機の考え方は恐ろしい誤りであった。それは真の環境問題から注意をそらし、莫大な費用を費やし、消費者を貧困に陥れ、貧困構造を永続させ、若者を恐怖に陥れて出生率を低下させ、貴重な年月を浪費し、民主主義を弱体化させ、科学を歪めたのである。そろそろこの誤りを繰り返すオウムを葬り去る時だ。