生成AIと電力供給 – 米国の現状を中心に(講演会要旨)
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
先日ベネズエラの石油に関する私の原稿がWedge Onlineに掲載された。原稿の中で米国の石油関連協会の資料にあった「米国の製油所の7割は重質油を利用する設計」とのデータを使った。出所までは示していなかったところ、読者の方が生成AIに聞いたところ「そんなデータはない」との回答だったと書き込みをされていた。
生成AIの回答は間違っていることもあるし、読み込んでいないデータであれば、そんなデータはないと回答することもある。あまりに鵜呑みにすると間違うこともあるということだ。ただ、利用は広がる一方だ。そのため「職がAIに奪われる」と懸念する人も増えている。米国の世論調査は、AIによりなくなると考える職種を質問していた。
結果は図-1の通りだが、こうなるのだろうか。今までも、新しい技術、サービスが開発される度に仕事がなくなると繰り返されてきたが、全体の雇用者数には影響はなかった。なくなる仕事がある一方、あたらしい分野の仕事が作られるからだ。新技術、サービスにより雇用は増えたのではないだろうか。フィジカルAI(ロボット)により影響を受ける仕事もありそうだが、それよりも新たに仕事が作られると考えるほうが良いのではないだろうか。
AIを支えるデータセンター
AIの利用には、当然だが計算するデータセンターが必要だ。生成AIの計算量の増加はデータセンター需要を大きく増やした。米国は世界のデータセンターの約半分を持ち、設備容量では、約45%を持つ。中国のデータセンター数は、米国10分1以下だが、大規模なデータセンターが多く、設備容量では、米国の世界シェア45%についで26%を持つ(図-2)。日本はデータセンター数では世界10位、設備容量では世界シェア2%程度しかない。
米国ではデータセンターの建設に伴う半導体製造を合わせ、AIバブルと呼ばれる状況になっている。24年下期から25年上期のGDPの伸びのかなりの部分を情報処理機器、つまりAI関連投資が占めている(図-3)。AI関連投資の伸びは多少鈍っているものの相変わらず米国経済をけん引している。世界のデータセンター建設は今後ともAI用を中心に伸びる。多くの予測があるが、30年には25年の2倍以上になるとの予想もある(図-4)。
急増するデータセンター用電力需要
電力需要の伸びの予測には不確実な要素がある。一つは、エネルギー効率の改善が電力需要の抑制に働くことだ。もう一つは、データセンター事業者が多くの電力供給事業者に声をかけているため、需要が膨らんでいる可能性が高いことだ。その点を考慮しても、データセンターは電力需要に大きな影響を与えるとみられている。例えば、国際エネルギー機関の予測は図‐5の通りだ。BCG(ボストンコンサルティンググループ)は米国のデータセンターの需要だけで、30年には日本全体の需要を超えると予想している(図-6)。
では、日本の電力需要には、どんな影響があるのだろうか。地域によりかなりの差がありそうだ。電力広域的運営推進機関が今年1月に発表した35年までの10年間の地域別の電力需要量と電力最大需要の増減予測を図-7に示した。電力需要量は、過去10年以上波を打ちながら減少していたが、35年には今から5%増加すると予想されている。十分な電力供給が担保されなければ、データセンターは日本には新設されない。電力供給が日本のAI、新規事業による経済成長を支える現実を踏まえ、政権は設備新設のための制度を真剣に考える時期だ。失われた30年が40年、50年と続けば、実質所得の減少に歯止めはかからない。
データセンター誘致の条件は
潤沢で安定的な電力供給に加え、データセンターには必要なものがある。最近のハイパースケールと呼ばれる大規模データセンターでは冷却用に大量の水を消費する。将来はリサイクルにより消費量の減少も考えられるが、現状では水の供給も条件になる。できれば安価な広大な土地も必要だ。
通信回線も当然必要だが、送電線との比較では大きな工事は必要ないと考えらえるので、大きな問題にはならないだろう。米国の例をみても、需要地の近く以外に土地代、電気料金が安い州にもデータセンターは立地している。地方で最も問題になるのは、電気、機械関係の人材だろう。加えて、GPU、非常用電源、ガスタービンなどの入手にも時間がかかる可能性が高い。地方自治体の支援が必要なことは言うまでもない。



















