省エネルギー小委員会(9月3日)における自工会の「エネルギー基本計画の見直しに向けて」


Japan Automobile Manufacturers Association, Inc.

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 自動車産業は製造・販売をはじめ整備・資材など各分野にわたる広範な関連産業を持つ総合産業であり、直接・間接に従事する就業人口は約554万人。
 設備投資額や研究開発費は日本経済の中で大きな割合を占める。

 本稿では、2024年9月3日開催された、「第46回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会」でプレゼンテーションした、一般社団法人 日本自動車工業会(以下、自工会)における「エネルギー基本計画の見直しに向けて」(特に「自動車走行で使用するエネルギーの非化石化」)について紹介する。

カーボンニュートラルに関する基本的な考え

自工会は、世界中のお客様のニーズに合わせた、多様な選択肢の提供を通じて、2050年のカーボンニュートラルに向けて、自動車業界を挙げて全力でチャレンジする事をコミット。

道路交通部門におけるCO2削減の諸外国との比較

下図は、G7参加国にオランダを加えた8か国による、2001年を起点とした各国の道路交通部門におけるCO2排出量の増減を示している。
日本は、自工会会員各社による内燃機関車の継続的な燃費向上や、電動化等の推進により、2022年実績で-29%(2001年比)とCO2排出削減が他国よりも進んでいる。

新車販売台数に占める次世代自動車の割合(乗用車)

下図は、日本の新車販売台数に占める次世代自動車(HEV、PHEV、EV、CD:クリーンディーゼル、FCV)の割合を示している。
直近2023年の実績では、既に50%の大台をクリアして54%を記録。2030年政府目標の50~70%の下限値を2023年で既に上回っている。
自工会の会員メーカーは、引き続き2035年の政府目標である乗用車の新車販売で電動車100%導入に向けて、お客様のニーズを踏まえながら、次世代自動車の普及を推進して行く。特に、EVやPHEVで使われる電池の低コスト・軽量化や次世代電池の開発、HEVやPHEVで使われる内燃機関の高効率化、FCVの性能向上など、各種技術開発に最大限の努力を行う。

クルマが使用するエネルギーのカーボンニュートラル(以下、CN)化の必要性

自動車のCN化には、車両の種類だけではなく、クルマを走行させるために使う燃料やエネルギーのCN化が最重要。
自工会会員各社は、お客様が求める選択肢をタイムリーに投入していく事が重要と考えており、世の中の実需に沿って、これからも多様な車種(HEV、PHEV、BEV、FCEVなど)の提供をして行くが、どんな車両であっても、CN化されたエネルギーがなければ、自動車としてのCN達成は出来ない。
自動車単体だけではなかなか進まない自動車セクターのCN化について、クルマが使用するエネルギー供給側と共に協力して進めていきたいと考えている。

クルマが使用するエネルギーの将来のあるべき姿(スコープⅢ-Cat.11)

下図は、環境省が本年6月に示した2050年ネットゼロに向けた道筋であり、2040年断面でのGHG排出量は、2030年と2050年のちょうど中間を見込んでいる事が分かる。
この道筋を前提とすると、クルマが使用する全ての燃料やエネルギーの非化石化率は、2040年断面では2030年と2050年目標の中間程度となるべきと推計できる。
○ 電源の非化石化率: 80%以上(※2030年目標値:59%)
○ CN燃料(バイオ/合成燃料)比率: 50%以上
○ 水素燃料のグリーン水素混入率比率: 50%以上

自動車製造工場で使用するエネルギーの非化石化について(スコープⅠ、Ⅱ)

自工会は、2013年度以降、太陽光発電の導入拡大等、各種エネルギー供給側の対策、溶解炉・乾燥炉の効率最適化等、各種エネルギー使用側の対策を車工会と連携しながら進め、概ね継続的にCO2排出量を低減してきている(下図参照)。
電動車が増え、CO2の排出増要因がある中でも順調に排出削減努力を続け、2022年には2030年度目標を産業部門と同じ2013年度比38%に引き上げた。引き続き、2050年のCN達成に向けて更なる低減を推進していく。
工場で使用するエネルギーに対する自工会からの要望

CNエネルギーの安定かつ安価な供給体制(スコープⅠ):

✓特に中・高温熱源用の脱炭素エネルギー(水素、e-メタン等)を安価に利用可能となる供給体制整備を進めて頂きたい。

電気の非化石化(スコープⅡ)

✓電気事業低炭素社会協議会の2030年目標が0.25kg-CO2/kWhであり、IEA(国際エネルギー機関)が発表している日本のAPSシナリオでは、
・2030年見通し: 0.24kg-CO2/kWh程度
・2040年見通し: 0.05kg-CO2/kWh程度
と試算されている事から、この値を目指して頂きたい
(※Announced Pledges Scenario:各国の長期目標やCNに向けた誓約を踏まえたIEAシナリオのひとつ)。

✓製造工程の電化に伴う、電力需要の増加にも対応できる総発電量の確保を要望。

✓国際商品である自動車は輸出先の規制適合が必須である事から、欧州等の規制適用時期迄に再エネ電力証書の海外での相互利用の実現が必要
(特に欧州に向けて、国内証書の利用が可能となる交渉の完結)。

まとめ

自工会は2050年CNへ向けて自動車業界を挙げて全力でチャレンジ。
自動車単体だけではなかなか進まない自動車セクターのCN化については、クルマが使用する燃料・エネルギーのCN化が必須であり、その達成に向けて、エネルギー供給側と共に協力していきたい。
環境省が示した2050年のCN化に向けた道筋を前提とすると、クルマで使用する全ての燃料およびエネルギーが、2040年断面では2030年と2050年の非化石化率目標の中間程度となるべきと考える。
クルマを製造する自工会の会員メーカーは、引き続き、太陽光発電の導入拡大等を通じて、車両の製造段階におけるCO2排出削減を推進するとともに、車両開発面においては、特に、EVやPHEVで使われる電池の低コスト・軽量化や次世代電池の開発、HEVやPHEVで使われる内燃機関の高効率化、FCVの性能向上など、各種技術開発に最大限の努力を行う。