他人ごとではない低成長のドイツ


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」より転載:2024年4月11日号)

 ドイツ経済が低迷している。OECDによる今年の成長予測はG7諸国の中で最低の0.3%だ。経済低迷の大きな理由はエネルギー価格の上昇だ。パイプライン経由で送られてくるロシア産の安価な天然ガスは、ドイツの製造業を助け輸出を増やした。1993年の日本とドイツの輸出額はほぼ同じで4000億ドル弱だったが、2022年ドイツの輸出額は日本の7470億ドルの2倍以上の1兆6576億に伸びた。30年前に世界貿易の10%あった日本のシェアは3%まで落ちた。今世界5位の日本の直ぐ後ろに6836億ドルの韓国が迫っている。

 低廉なロシア産天然ガスに加えロシアの石油、石炭も失ったドイツは、エネルギー価格の上昇に直面した。今年2月の消費者物価指数でみると21年1月からエネルギー価格は47%上昇している。60%以上上昇していた22年秋からは少し下がったが、依然大きな額だ。エネルギー価格の上昇は産業に直接の影響を与えた上に、物価と金利上昇を通し消費支出と設備投資を抑制し、成長率を鈍化させた。

 23年平均1kWh当たり45.73ユーロセント(73円)だった家庭用電気料金は、今年少し下がり42.22セントだ。22年に43.20セントに達した高圧の新規契約の料金は、今年になり17.65セント(28円)まで下がったが、依然として主要国の中では高い。

 ドイツ政府は、製造業の海外流出を恐れ、製造業の電気料金への5年間の補助金支出を決めた。緑の党のハーベック経済・気候保護相は米国並みの料金を主張したが、ショルツ首相とリントナー財務相の反対により補助額はハーベック大臣案の半分程度になった。

 IMFのモデルによると、コロナ禍前との比較でドイツのエネルギー価格が20%上昇したレベルに留まれば、国内総生産を1.2%引き下げる。日本では再エネの導入がまだ続く。欧州、米国の比較で自然条件に恵まれない日本が再エネ導入を続ければ、エネルギー価格・電気料金の上昇は避けられない。結果は成長率の下押しだ。春闘で実現した賃上げが長続きすることはなさそうだ。