原電敦賀2号、規制委の審査進む

― 早期稼働を期待 ―


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 日本原電の敦賀原子力発電所2号機の原子力規制委員会による審査が進む。今年9月まで約2年にわたって中断していたが、その後は淡々と議論と確認が進んでいる。この原子炉ではその下の破砕帯が活断層かどうかの議論が10年以上行われてきた。この期間の長さは異常だ。行政と原電の協力で、安全性を確認した上で早期稼働を行い、現在問題になっている電力の不足と価格上昇を抑制することにつなげてほしいと願う。


日本原電敦賀発電所2号機(原電提供)

規制委員会、審査再開認めるまでの経緯

 敦賀2号機の審査は同社が2015年11月に原子力規制委員会に提出した「原子炉設置変更許可申請」で申請書を説明する審査資料に不備があるとして、2020年10月以降、約2年間中断した。これは東京電力の福島第一原発事故への反省から作り直された新規制基準に適合するための、原子炉設備の変更を申請、判定する手続きだ。

 規制委は今年(23年)4月に、原電に補正書の提出を求め、また文書不備の指導を行い、原電は8月31日に改善策と補正書を出した。規制委は、それを受理し、審査再開を9月6日に認めた。昨年(22年)10月の段階で規制委は意図的な書き換えなどはなかったと判断していたが、審査資料の変更が重なったために、これらを反映することを求めた。

 この審査では、近くを走る断層(審査ではK断層と呼ばれる)が活断層であるか。またそのK断層が原子炉の下の破砕帯と連動しているかが焦点になってきた。新規制基準では活断層の上に原子炉を設置することを認めていない。ここで言う活断層とは、「将来活動する可能性のある断層等、後期更新世以降(12~13万年前以降)の活動が否定できないもの」としている。

 原電は審査のために、その地層においてボーリング調査を行った。ボーリング調査の結果の地層を図示することは、地質調査のために一般的に行われ、その図は「柱状図」(ちゅうじょうず)と呼ばれる。その図はそのままの形で評価者に提出されるが、原電は審査のために柱状図に記載していた肉眼観察に基づく評価結果を、より詳細な顕微鏡観察に基づく評価結果に変更したことが、生データを加工したと受け取られ問題視された。

 また資料の取り違えの箇所、誤記なども、申請書の中に多数あった。原電は、修正が必要とされた約470ページの当初申請を差し替え、再提出分の補正書は1600ページになったという。

 さらに規制委員会も、認識などの行き違いがあったことを踏まえ、合意事項と論点を審査会合ごとに文書化するようにした。現在まで、K断層の評価をめぐっての議論は、原電が提出した資料によって進められ、11月までに審査会合は2回行われている。そして12月までに現地調査が予定されている。


原電による地質調査の状況(2014年、筆者撮影)

原電、再発防止に取り組み、資料はより詳細に

 また原電提出の補正書では、原電は新たな知見を書き加えた。これまでのようにボーリング柱状図では、評価結果などの所見を加えずに、観察した元データをそのまま提出。さらに、新たなボーリング調査を行い、データを加えた。破砕帯の最新活動面の判定に、最新のCTスキャンにより観察を行い、地層の年代判定の新たな方法を複数取り入れ、K断層を判定した。

 その結果、「K断層は活動するものではないこと、敦賀2号機の原子炉建屋直下のいずれの破砕帯とも連続しないことを確認した。主張を新資料で強化し、規制委員会にも理解をいただけると思う」(担当者)としている。

 また原電は、規制委からの指導を真摯に受け止め、作成する書類の品質強化に取り組んだ。記録やデータの関係を確認して間違いがないようにし、プラントメーカー、電力会社の支援を受けて、補正書を作成した。社内の査読、チェック体制も、より細かくした。

 原電は「引き続き原子力規制委員会の審査に真摯に対応するとともに、敦賀発電所2号機の安全性、信頼性の向上と地域の皆様への情報提供に積極的に取り組んでいく」(同)している。

浮かび上がった原子力規制の問題

 審査が少しずつ進んでいるのは、良い状況だと私は思う。しかし、この審査期間の長さは問題だ。

 西日本の原発は稼働しているが、北海道、東北、東京、北陸、中部、中国、原電の各電力発電所は、2011年3月の東京電力福島第一原発直後から順次停止している。停止期間が、あまりにも長すぎる。それは原子力規制の問題があるためだ。

 東京電力の福島第一原子力発電所の事故以降、規制ルールが強化された。2012年に新しい原子力規制委員会ができ、新規制基準ができた。旧制度で一度運転と建設の認可が出た原発を、新規制基準に基づいて、審査をやり直させている。

 安全性を高めようという取り組みは評価されるべきであろう。しかし、それによって原子力の活用が遅れている。特に地質の判定によって審査がどの原発でも遅れがちだ。

 規制行政の変化は当初は混乱した。原電の敦賀2号機には、規制委員会の依頼に基づく有識者調査団がやってきて2013年に、この敦賀2号機の下の破砕帯を活断層の可能性があると報告した。この判定については、判断の妥当性をめぐり、地質学者や原電の強い批判が出て、審査会合の参考にするという位置付けになっている。

 敦賀2号機は一度、行政の認可が出されて建設され、1987年から営業運転を開始し、運営されてきたプラントだ。そのプラントが2012年に出された新規制基準によって、事後的に止め、運用できなくなっているのは、企業の財産権の侵害だ。そして仮に廃炉になった場合の補償、今回のような長期停止の補償は、制度の上で全く決まっていない。原子力プラントは、建設に数千億円かかり、企業活動のための設備だ。行政機関の規制委が、その判断で民間の電力会社に損害を与える仕組みは、明らかにおかしい。

安全を確保し、早急な再稼働を期待

 そして、行政の判断があまりにも遅い。行政手続法では全ての行政機関は2年以内に、行政手続きを完了させることを求めているが、敦賀2号機は10年以上も止まっている。

 原電は審査書類の記載ミスなどをした。それは問題だし、当然是正をされるべきだ。しかし、規制の手続きと審査が煩雑になり、書類が膨大で、審査が長期になっていることから、そうした間違いを誘発した面があると思う。補正書は1600ページの量になった。書類の完成度ではなくプラントの安全性を審査することが重要なのに、規制委、規制庁は書類審査の形式主義に流れている懸念がある。

 原子力の稼働が遅れ、その結果、日本全国で電力不足に陥り、電力価格も上昇している。約116万キロワットの発電能力がある原電の敦賀2号機が稼働すれば、電力の需給問題の改善に役立つ。

 日本原電は早急にこの2号機の運用を始めてほしい。そして規制委は、その審査を速やかに行なってほしい。10万年の間にあるかないかの活断層の運動を注目することは大切かもしれない。私はそれと同じように、今の日本の経済・社会を維持するために、安く大量の原子力発電の電力を供給することも大切だと思う。