貴重なグリーン電力を捨てるな


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 先月10月に資源エネルギー庁から出された資料、「再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について」を見る機会があったが、この中で、2023年度に太陽光や風力発電といった変動性再生可能エネルギー(再エネ)からの出力が電力需要を上回るようになる地域が増え、出力を抑制させるレベルが大きく上がっている現状を示す資料があった。日本の脱炭素に向けた施策の中心が再エネによる電源の増強だ。その出力が電力需要の変動とうまく対応出来ないために、出力を抑制させて需要に合わせざるを得なくなっているのだが、それが具体的な数字で示されている。

 「2023年度の各エリアの再エネ出力制御見通し等」では、東京電力管内以外の地域で、大小はあるが、再エネの出力制御が行われると予測していて、その数字が示されている。見通しの再エネ出力抑制比率がもっとも高いのは、九州で6.7%、それに続くのが中国地域の3.8%、四国の3.1%が突出して高くなっており、4番目は東北の0.93%、さらに、北陸の0.55%、中部の0,26%、関西の0.20%、沖縄の0.14%、北海道の0.01%という数字が示されている。これに東京地域は入っていないが、東京都が大手住宅建設事業者に対し、新築建物に太陽光パネルの取付を義務づけたことから、いずれは、この仲間入りをすることになるだろう。

 再エネ電源の出力制御(抑制)は、地球温暖化ガスである炭酸ガスを排出しない電力を捨てたのと同じ意味を持っている。これを抑制せず、極力使えるような施策を行わなければ、脱炭素に向けた日本の施策に水を差すことになりかねない。発電量が需要を上回る時間帯はある程度予測は出来るから、その時間帯に人為的に電力需要を作り出すことができれば、出力抑制を回避、あるいは、大きく引き下げることが出来ることになる。

 そこで参考になるのが、筆者が2020年9月7日本欄で紹介した、再エネが余剰になる時間帯に冷凍機を駆動して電力消費を上げるという冷凍システムの導入だ。冷凍食品の流通量は拡大しているから、漁港などを含め各地に冷凍倉庫は稼働している。日本ではほぼスマートメーターの設置は終わっているから、これを経由して送電系統から駆動の指示をするシステムを導入すれば、必要な時間帯に冷凍庫の駆動をさせることができる。さらには、全国各地に店舗を持つコンビニも小規模な冷凍庫を持っている。これが一斉に駆動すれば、全体として電力需要は急増する。時間帯を分けて冷凍庫を駆動させれば、需要の変動を抑制させることもできる。この時間帯に消費される電力の料金を格安にすれば、ほとんどの事業者は参加協力するだろう。

 全く別の形で太陽光発電からの電力を消費する新しい方式も考えられる。それは、既に多くの国で検討、実証されているが、時間帯によって変わる抑制量に相当する電力を使って水を電気分解し、水素を製造する設備を設置し、余剰相当分の再エネ電力で水素を製造して貯蔵する。これはグリーン水素だから、水素燃料電池や水素タービンで発電すれば、グリーン電力が生まれると考えることができる。

 グリーン電力の出力抑制ではなく、従来型火力発電の出力抑制をすべきだろう。