食料システムの未来は、気候ではなく技術で決まる

だからこそ、研究開発投資がかつてなく急務なのだ


ブレークスルー研究所(Breakthrough Institute) 気候・エネルギーチーム 共同ディレクター

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 産業革命直後のマルサスの「人口論」、ジェヴォンズの「石炭問題」は、食料とエネルギーの不足が人口増を支えることができず、やがて世界は貧困に陥ると指摘しました。
 当時大きな話題になりましたが、著名な経済学者2人の予測は外れました。技術の進歩を適切に予測できなかったからです。
 1972年にはローマクラブによる「成長の限界」が話題になりました。同書の予想では石油は既に尽きているはずですが、依然として50年分の可採埋蔵量があります。20世紀になっても技術の進歩による埋蔵量の増加を予測できなかったのです。
 最近では気候変動問題が農業と結果人口問題に影響を与えるとの主張があります。ブレークスルー研究所のパトリック・T・ブラウン氏が、気候変動問題が農業生産に与える影響と生産性を向上させるための取り組み・要因を分かり易く解説されています。少し長い論考ですので、最初の部分のみ紹介させていただきます。全文については、最下部のリンクからご覧ください。

国際環境経済研究所

監訳 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志 訳 木村史子

本稿はPatrick T. Brown 「Technology, Not Climate, Will Determine the Future of our Food System
That’s why R&D funding is more urgent than ever
」を許可を得て邦訳したものである。

 1968年、アメリカの科学者ポール・エーリッヒとアン・エーリッヒの夫妻は『The Population Bomb(人口爆弾)』を出版した。 その中でエーリッヒ夫妻は、世界の人口、特に南アジアとサハラ以南のアフリカの低所得国の人口が、世界の農業生産の「限界」を超えて増加し、死と絶望が蔓延すると予見した。

 エーリッヒ夫妻は間違っていた。人口は20世紀後半も増え続けたが、農業生産高も増加した。そして、1970年以降、地球の気温は摂氏1度以上上昇した。おそらくエールリッヒ夫妻であれば飢饉はさらに悪化すると言ったことであろう。しかしながら、この半世紀は人類史上最も食糧が十分に確保された時代であった。

 ポール・エーリッヒが1968年に言ったことは間違っていた。にもかかわらず、環境保護論者、人口抑制論者、そして人類が自給自足し続けることが不可能になる、という不吉なことを予測する終焉論者にとって、彼は影響力のある発言者であり続けている。2018年、『人口爆弾』50周年に際して、エーリッヒは彼の生涯をかけた論文を、今度は気候変動を加えて再論し、学術誌『Sustainability』で「人口過剰」が将来の飢餓を引き起こす恐れがあると主張した。 

 エーリッヒが世界的な農業生産の限界に対する解決策として人口抑制に焦点を当てたことは、もはや流行遅れとなった。だが、最も主張の激しい気候変動問題の活動家たちは、いまだに将来の気候変動による飢餓の到来を警告したがる。エーリッヒのように、これらの活動家は、気温上昇、干ばつ、異常気象による農業収穫量の減少を示す気候変動モデルを、彼らの主張の証拠として提示している。しかし、これらの主張は重要な点を見逃している。これはエーリッヒが認識できなかったのと同じ点である。それは差し迫った災害を指摘するほとんどの主要な研究が見過ごしている点でもある。

※ 続き(全文)はこちら「食料システムの未来は、気候ではなく技術で決まる だからこそ、研究開発投資がかつてなく急務なのだ」からご覧下さい。