セメント産業におけるカーボンニュートラルへの取組みについて


Japan Cement Association

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 セメント協会では2022年3月に2050年におけるカーボンニュートラル(CN)ビジョンを公表している。

 このビジョンでは、セメント産業としての役割として期待されている基礎素材の安定供給を基本としつつ、循環型社会への貢献(図-2参照)や、災害廃棄物の処理の貢献(図-3参照)等現在の役割を維持したままCNの達成に向けて不連続な技術開発を行っていくことが記載されている。


図-2 セメント産業における廃棄物・副産物利用状況(2022年度)


図-3 セメント産業における災害廃棄物支援状況

 この長期ビジョンは、2050年における絵姿として示しており、上記目標達成に向けて、会員会社ではグリーンイノベーション基金を活用して現在技術開発を行っている(図-4参照)


図-4 グリーンイノベーション基金事業
(CO2を用いたコンクリート等製造技術開発)

 また、CNに向けたトランジション期間における取組みについて、業界全体に普及させCNを実現するためには、グリーンイノベーション基金だけでなく、長期的な取り組みが必要であり、そのためには、金融機関等からご支援をいただく必要がある。そこで経済産業省と合同で、「トラジション・ファイナンス推進のためのロードマップ」を作成・公表している(図-5参照)

 一方2030年度の目標については、経団連のカーボンニュートラル行動計画で目標を設定している(図-6参照)


図-6 カーボンニュートラル行動計画
(エネルギー原単位目標)

 これは省エネ設備と廃棄物の有効活用によって削減を表現しており、これまで基準年度の2013年度に対して、186MJ/tセメントの削減を達成している。
 加えて革新的技術開発で「省エネ型セメント」を業界で開発中であり既に実機による試焼成を行い、その製品評価の段階に入っている。この技術を用いて2024年度のJISの改正を目指しており、更なるエネルギー消費削減を達成したいと考えている(図-7参照)


図-7 カーボンニュートラル行動計画
(革新的技術の開発)

 上記目標に加えて、セメント協会では、昨年度の経団連の低炭素社会実行計画からCN行動計画への名称変更に伴い、エネルギー原単位だけでなく新たに二酸化炭素(CO2)削減目標も設定しており、これまで説明した方策を活用することで達成にむけて尽力している(図-8参照)


図-8 カーボンニュートラル行動計画
(総CO2排出量の削減)

 セメント産業はエネルギーからだけではなく、プロセスからもCO2を多く排出しているという特徴があり、CNを実現するためには、これまで長年取り組んできた省エネ設備の導入や廃棄物・副産物の有効活用という取組みだけでは達成は困難である。今後は技術開発を推進しつつ、ステークホルダーの理解と協力を得ながら、わが国の目指すCNの実現に貢献していきたいと考えている。