【提言】原子力発電所再稼働の全力加速で電力危機を克服し2030年原子力発電目標(20~22%)を達成せよ!

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(「日本原子力学会シニアネットワーク連絡会 提言活動」より転載

【提言と詳細説明】

我が国のエネルギー・脱炭素政策の現状と課題全般

我が国は「2050 年カーボンニュートラル(CN)達成を目指し、原子力発電への依存度を極力低減する一方で再生可能エネルギーの主力電源化」を国策と定め、その道筋として「第6次エネルギー基本計画(第6次エネ基)」を閣議決定(2021年10月)。
第6次エネ基は世界的エネルギー危機の中で原子力を軽視しての再エネ主力電源化は本当に国益に叶うのか、或いは2050CNの実現性目途など課題が多いとの指摘が多い。

我が国の現下の電力需給の危機的状況

今年3月に発生した福島沖地震による火力発電所の損壊を契機に我が国の電力供給の危機的状況があらわになり政府から繰り返し電力逼迫警報が発せられている。政府は『今夏・冬の電力需給逼迫回避のため再エネ、原子力などエネルギー安全保障及び脱炭素効果の高い電源の最大限活用を図る』と宣言(5月9日)。更に5月25日、電力広域的運営推進機関は『今冬の東電管内は依然として厳しく、西日本ではこれまでの予想より悪化する』と発表。この状況は、世界第三位の経済大国にあるまじき状況であり、電力安定供給体制の構築が急務である。

岸田総理による最近の原子力政策に関する発言の重要性

第2回GX実行会議(8月24日)に於いて『電力の需給逼迫とエネルギー安全保障に対応するため再稼働した原発10基に加え、来年の夏以降追加で7基の再稼働を目指す。その上で、原子力の利用に関して既設炉の最大限活用、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設、原子力発電所運転期間延長、バックエンドを進めるための積極的関与等を進める』旨明言。
又、臨時国会における所信表明演説(10月3日)で総理は『直面する劇的な難局を乗り切り我が国の未来を切り拓く政策を果断に実行する』との決意を述べ、原子力発電の問題に正面から取り組む旨明言。
政府関係者は原子力政策に係る岸田総理の発言を重く受け止め日本にとって原子力発電が必要欠くべからざる選択であることを明確に打ち出す政策を示し、これまでの原発政策の空白を早急に埋るべく原子力と向き合った骨太政策を果敢に実行されることを強く期待する。

2030年原子力発電目標(20~22%)達成の意義と本提言の狙い

東電福島原発事故を受け抜本的に改革された原子力規制体制のもと、新規制基準での安全性が確認されたプラントを再稼働させ上記目標を達成することは事故の反省と教訓がきちんと反映されたうえで原子力のリスクが大幅に低減されていることの明確な証左である。目標達成には、新増設・リプレースは間に合わず既存の原子力発電所の
最大限の再稼働と建設中原子力発電所の運転開始が唯一の選択肢である。
国民が原子力発電の稼働実績から、事実をもとに原子力の潜在的ポテンシャルを正しく理解し、原子力への不安・不信を払拭して更なる再稼働・新増設・リプレースに向けての国民的理解を得ることが肝要である。その上で、2030年原子力発電目標の達成は、原子力発電利活用の道を改めて拓くことで、 ①現下の電力危機への根本的解決、 ②エネルギー安全保障の基盤となる持続的安定電力供給、 ③国力維持と並行して脱炭素社会の実現、 に寄与するものと確信し本提言を発信する。

【2030年原子力発電目標の達成目途についての検討】

総理が指示した来年夏以降再稼働する17基では、当面の需給逼迫には対応できても、2030年の原子力発電比率目標(20~22%)を達成することはできない。2022年10月現在、我が国の原子力プラントは、再稼働運転中10基、審査合格・再稼働待ち7基、審査中10基、未申請9基、計画中7基の計43基である。これらについて、稼働状況、審査状況、電力の経営状況等を精査し一定の仮定の下で2030年における運転可能蓋然性を評価した。

◆ 評価条件(付表1参照)

2030年総発電量:第6次エネ基素案(2021年7月)で示された9,400億kWhとする。
設備利用率:
「原子力のポテンシャルの最大限発揮と安全性の追求(2021年4月、エネ庁)」を参考に以下の①②の2ケースで評価する。
ケース① 国内原発の永年の稼働実績からやや控えめな想定として75%とする。
ケース② 再稼働プラントの最近の稼働実績から現実的な想定として80%とする。
原子力プラントの今後の再稼働状況の想定:
- 新増設・リプレースと計画中プラントは本評価では対象外とする。
- 現在運転中の10基は今後も運転を継続する。
- 審査完了の7基は2030年までに地元了解を取得し再稼働する。
- 審査中の10基は2030年までに全て審査を完了し再稼働する。
- 未申請プラント9基は電力会社の経営事情や地元折衝等の不確定要素を考慮して
以下のⒶⒷの2ケースでの設備容量をベースに2030年発電量を評価する。
ケースⒶ :全てのプラントは2030年までには稼働しない。
ケースⒷ :未申請プラントの設備容量の半分が2030年の発電に寄与する。
2030年以前に40年運転期間満了となるプラントは適切なタイミングで60年運転可能となる運転延長を申請し2030年までに認可を得る。

◆ 評価結果(付表2参照)

2030年時点で、27+α基の原子力発電所の運転可能蓋然性を前提で評価すると2030年原子力発電目標(20~22%)はほぼ達成し得ると評価された。
<未申請プラントが全て稼働しないケース>
設備利用率75%:発電比率は 19.3% < 20 %
設備利用率80%:発電比率は 20.6% > 20 %
<未申請プラント9基の設備容量の半分が発電するケース>
設備利用率75%:発電比率は 22.6% > 22 %
設備利用率80%:発電比率は 24.2% > 22 %

備考(評価の不確定性などにについて)
評価条件には以下の如き不確定性があることに留意する必要がある。

イ)
2030年総発電量(~9400億Kwh)は経済成長率や省エネを勘案して設定されているが発電量はやや過小評価との見方もある。
ロ)
審査完了のプラントでの地元了解の取得の目途・審査中のプラントの今後の審査プロセスの非予見性と審査完了後の再稼働までの道筋・未申請プラントに係る電力会社の経営判断などの不確定性

【提言】 再稼働の全力加速で電力危機を克復し2030年原子力発電目標を達成せよ!

現下のエネルギー危機を克復し2030年の原子力発電目標を達成して原子力発電が有す「実力と価値(安全性・生産性・経済性・環境性)」を実績で示すことが肝要である。
以下に個別提言を列記する。

【再稼働プラント(10基)】
電気事業者は、再稼働プラントの安定・安全運転を徹底するとともに、稼働率向上に全力で取り組め。電力事業者は不祥事根絶に取り組み地元住民と規制当局からの信頼獲得に全力を尽くせ。
【審査完了・稼働待ちプラント (7基)】
政府(総理・官邸・経産大臣・エネ庁長官)は、審査完了・稼働待ちプラントの再稼働の早期実現に向けて地元了解取得努力を電力会社だけに任せることなく地元首長との直接折衝に鋭意努めよ。
【審査中プラント (10基)】
規制当局と電気事業者は、密接な連携のもと、審査促進に全力で取り組め。
電気事業者は、「新規制基準適合性審査の状況」で規制当局が指摘している審査上の論点に対して、「事業者としての対応方針と審査終了希望日時」を公表すること。さらに規制当局は、行政手続法に規定されている審査の予見性を高めるようプロセスの改善に速やかに取り組め。
(参考:柏崎刈羽6、7号機と東海2号機の再稼働で東電の予備率は8%改善される)
【未申請プラント(9基)】
電気事業者は、未申請プラントのうち地元了解取得の目途がつきやすいプラントについては社内審議を取り進め可能なプラントから早期に申請されたい。