シャワーヘッドの吐水量


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 水が豊富にある日本では、風呂の水量を気にすることはあっても、シャワーの水量を意識することは余りないだろう。だが、Bloomberg社の情報で知ったが、常に水不足に悩む米国カリフォルニア州では、シャワーヘッドの吐出量に上限を設け、一分の流量が最大1.8ガロン(約7リットル)となっている。それに対しテキサス州では、連邦政府EPA(環境保護庁)が設定した上限である2.5ガロン(約9.5リットル)のシャワーヘッドが使われている。

 このところ米国では干魃に襲われている州が増え、カリフォルニアに倣ってシャワーの上限吐出量を引き下げようとする方向に向かっている。2019年にはハワイとワシントン州(DCではない)がカリフォルニア州と同じ1.8ガロンにし、マサチューセッツ州では昨年に2ガロン、ユタ州などでも同様のシャワーヘッド吐水量に規制をかけるようになった。

 米国で水の無駄遣いを止めようとする活動はカリフォルニア州で1970年代に始まったものだが、同州が連邦政府に強く働きかけたことで、1992年に、蛇口の太さ、シャワーやトイレ(大小)の流量に全米規制がかかるようになった。連邦規制が現実化するのには20年を要したのだが、その後米国での人口当たりの水消費量は急激に下がっている。カリフォルニアでは1990年には231ガロン(874リットル)/日だったものが、今では91ガロン(344リットル)/日に下がっている。一方アイダホ州では2015年でも184ガロン(696リットル)/日と、大きな差が出ている。

 このような規制が欧州や日本でどのようになっているかを調べて見た。そこで分かったことは、双方とも規制ではなく、エコマークの基準が設定されているということだ。2013年のEU資料によると、シャワーヘッドの上限流量が8リットル/分のものがエコマーク基準となっているが、英国ではこれと異なり、6リットル/分が上限とされている。

 ところが、日本のケースでは、シャワーヘッドの吐水量に上限が設定されていない。日本環境協会、エコマーク事務局の規準では、吐水量を抑制できる機構が組み込まれているシャワーヘッドがエコマークの認定規準となっている。節水型であれば、その流量の大きさには無関係にエコマークが認定されるということだ。この理由を事務局に問い合わせたところ、日本の場合、国全体として水が豊富であるので、水量を絞る必要度が大きくないため、節水機構が組み込まれていれさえすればエコ商品として認定されることになっているということだった。

 シャワーを節水型にすると、快適性が落ちるという課題が出てくる。これに対応するための技術開発をメーカーが競っているが、国によって快適だと感じる要素が少しずつ異なっている。それに対応するのがメーカーの腕の見せ所と言えるだろう。シャワーヘッドの内部に穴を開けた円盤を組込み、水の出口にある穴と対応させることで、シャワーから出る水の拡がりを制御したり、空気を取り入れて水と混合させ、肌にお湯があたる時の快適性を高めたりするなど、様々な工夫が取り入れられている。シャワーで頭を洗うシャンプーの時に、吐水量を半分ほどに絞っても、空気の泡をうまく組み入れて快適なシャンプーができるようなシャワーヘッドも実用化されている。

 ここでの課題は、使い勝手と効率の良いシャワーヘッドが開発されても、既築の家では取り換えるインセンティブがないために普及が進まないことのようだ。