揚水式水力発電について
東内 正春
東京電力ホールディングス株式会社 ESG推進室
2022年3月の地震による発電設備故障や厳冬・猛暑といった気象条件といった要因が重なり需給ひっ迫の状況が続き、社会の皆さまには節電や省エネのご協力を頂き、誠にありがとうございます。
そのような中、貴重な電力供給力として「揚水式水力発電」が注目を集めていますので、ご説明します。
1.「揚水式水力発電」概要
【構成】
水力発電とは、水の流れる力で発電機を回して電気をつくる発電方法です。その中の「揚水式」は、水力発電において、主に電力需要が多い時間帯に活躍する発電所です。揚水式発電は、「発電機を有する発電所」と、この発電所を挟む「上部調整池」と「下部調整池」の2つの調整池で構成されます。
【発電方法】
電力需要が多い時間帯に、上部調整池から下部調整池に水を流して発電機を回すことで、発電します。この時、発電に使用した水は、下部調整池に貯められ、電力需要の低い夜間帯に、今度は電気を使って上部調整池に汲み上げられます。これにより、上部調整池に水が貯まり、電力需要が多い時間帯になると、再び上部調整池から下部調整池に水を流して発電することが可能となります。
揚水式発電所では、一定量の水を繰り返して使用しており、上部調整池に貯められた水の量が、この発電所での「発電可能容量(kWh)」となります。
【発電電力と発電時間の関係】
揚水式発電所では、上部調整池に貯められた水の量しか発電ができません。そのため、瞬間的にたくさんの発電をすると、その分運転可能時間は短くなります。逆に、長時間運転する必要があるのであれば、瞬間的に発電する量を抑える必要があります。
2.上部調整池の水がなくなると
揚水式発電における上部調整池から下部調整池に流せる水の量(確保水量)は、火力発電所におけるガス、石油などの燃料に相当し、この水量がなくなると発電機の運転が出来なくなります。
本来は、夜間帯に下部調整池から上部調整池に水を送り、翌日以降に再び発電ができるように備えますが、電力需給バランスが厳しいなどの理由で、夜間帯に上部調整池へ十分な水量をくみ上げられなかった場合、翌日以降の電力需要が多い時間帯に、下部調整池に流せる水の量が少なくなります。そして、揚水発電所での発電量が増加すると、上部調整池の水を使い切り運転が停止して発電できなくなる可能性があります。
3.節電や省エネの大切さ
このように揚水式水力発電は大きな電池のような役割を持っています。
2022年3月22日の需給ひっ迫時には、揚水式水力発電が供給力(kW)の約2割を担いました。
皆で電気を大切に使えば、電気を長く使えることになります。
我々の生活に無くてはならない電気ですから、暑い夏も寒い冬も電気を無駄遣いせず上手に使って頂ければと思います。
我々も、他の発電方式も含めて供給力の確保に努め、需給ひっ迫を乗り越えていく所存です。