日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会
一般社団法人 日本鉄鋼連盟
The Japan Iron and Steel Federation
1.当連盟温暖化対策における国際貢献の位置づけ
日本鉄鋼連盟は、自主的な地球温暖化対策として、京都議定書第一約束期間に実施した「自主行動計画」に続き、「カーボンニュートラル行動計画(旧:低炭素社会実行計画)」を推進している。同計画においては、エコプロセス、エコプロダクト、エコソリューション、革新的技術開発を計画の4本柱として、世界最高水準のエネルギー効率のさらなる向上を図るほか、優れた製品や省エネ技術を新興国中心に世界へ普及し、地球規模での温暖化対策に積極的に取り組んでいる。
2.日中交流会の経緯
日本鉄鋼連盟のエコソリューションの活動では、鉄鋼業の成長が見込まれる国や地域に対して、優れた省エネ技術の移転や政策提言等を通じ、地球規模での省エネに貢献している。粗鋼生産世界最大の中国ともエコソリューションの下、具体的な活動を展開している。
2005年1月に中国鋼鉄工業協会(CISA)から日本鉄鋼連盟に対し、環境保全や省エネ技術に関する情報交換を目的とする交流会開催の提案を受けた。同年7月、中国北京市において、日本鉄鋼連盟と中国鋼鉄工業協会の会長が環境保全や省エネ技術及びこれに関連する国際情勢や両国の政策について、活発かつ友好的に交流する旨の覚書を締結し、「第1回日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会」注1)を開催した。その後、開催地を両国によるシャトル開催とし、原則年1回のペースで2019年まで計11回の交流会を実施した。
これまでの十数年にわたる歴史の中で、交流会で扱うテーマも変遷している。省エネ技術に関しては、中国国内でCDQ(コークス乾式消火設備)やTRT(高炉炉調圧発電)といった主要省エネ技術の装備率が大幅に向上することに伴い、技術導入といったハード面での対策に加え、管理・操業といったソフト面での対策への関心が高まってきている。また、中国国内の環境規制が厳しくなる中、水処理、大気汚染対策などの環境保全に関する技術交流へのニーズが高まっている。更に、ここ数年では鉄鋼製品のライフサイクルアセスメントに基づく考え方や長期温暖化対策など、国際的な情勢を反映したテーマも積極的に取り入れてきた。
3.第12回交流会の開催
2019年10月に中国太原市で第11回交流会を開催して以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で開催を見送っていた本交流会だが、CISAの協力も得て、2022年3月28日、「第12回日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会」注2) をオンライン形式で開催するに至った。対面開催時のように終日の座学や製鉄所視察などフルコースでのメニューとはならなかったものの、目下、世界鉄鋼業の最大の課題であるカーボンニュートラルに向けた取組を中心に充実したプログラムを組成、オンライン参加という利便性のメリットもあり、日中合わせて約150と過去最大の参加を得て、有意義な交流を行うことができた。
また、交流会の総括として、日中双方の代表から以下の発言があり、本交流会の意義が改めて確認された。
日本側コメント
- 日中鉄鋼各社のカーボンニュートラルに向けた取り組み、革新的技術開発、EPD(環境製品宣言)/PCR、スクラップ利用技術など、いずれも大変興味深い内容であり、参加者に様々な知見が共有された。
- このような知見の共有が、両国鉄鋼業の持続可能な発展のための重要なヒントとなり、カーボンニュートラルに向けた両国の挑戦を下支えしていくものと確信している。
- カーボンニュートラルに向けた挑戦は両国鉄鋼業にとっての重要課題であり、こうした視点を持ちつつ、今後とも、本交流会を通じて有意義な情報交換・交流が続いていくことを期待する。
中国側コメント
- コロナにより、初めてオンラインでの開催となったが、結果的に両国にとって良いものとなった。オンラインに形式に変わっても、両国の交流の情熱に全く影響を与えず、発表は素晴らしく、活発に発言し、参加者は多くのものを得られた。
- 主なテーマは、世界の課題である低炭素分野で、この分野では自社/自国の発展を土台に世界に目を向けなければならない。合理的で効果的な道を模索する必要があり、我々の共通認識と理解している。今後もこのテーマは、日中で意見交換の機会を作っていきたい。
- 日中交流会が引き続き実施されることを祈念し、さらなる交流・協力が世界の低炭素につながることを期待している。
日本鉄鋼連盟は、今後とも、日中の相互利益に則りつつ、本交流会を発展させていくことで、引き続き地球規模での省エネ・環境対策ならびに鉄鋼業の持続的発展に寄与していく。