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世界のCCSの現状と今後の展望

– Accelerating CCS to Net Zero –


Global CCS Institute日本代表


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 本稿を執筆している現在、英国のグラスゴーではCOP26が開催されている。11月9日の山本隆三所長ブログでも言及しておられたが、日本は、COP25に続いて連続で「化石賞」を与えられることになり、日本のマスコミは、温暖化対策に消極的と判断された不名誉なこととして、このことを興味本位で報道している。しかし、化石燃料を環境負荷を低減しつつ使うことは、人類が文明を維持し発展させて行くためにはしばらくの間必要なことである。化石燃料によって排出されるCO2を削減する方法、技術には多くの選択肢があるが、ここでは、CCS(Carbon Capture and Storage)について、世界の現状について概観する。

 筆者が所属するGlobal CCS Instituteは、2009年に豪州政府の拠出金により設立され、「CCSは将来の低排出社会に必要不可欠である」というビジョンのもと、CCSに関する知識共有や認知度向上のために世界的に活動している。本部はメルボルンにあり、ロンドン、ブリュッセル、ワシントンDC、アブダビ、北京、東京にオフィスを有して世界のCCS動向をアップデートし、また、CCSの広報活動を積極的に展開している。

 毎年、「Global Status of CCS」と題するレポートを出版しているが、2021年版を先月10月に発表したのでその内容に基づいて、世界のCCSの現状と今後の展望についてご報告する。


図1 CCS施設数とCO2回収貯留量の推移 [拡大画像表示]

 世界では現在、135の商用CCS設備があり、その内、操業中が27、建設中が4、様々な計画段階にある施設は102を数える(操業中断中が2)。操業中の施設によって回収貯留されるCO2は、年間約4,000万トンで、計画段階も含めるとこの数字は約1.5憶トンに達する。施設数、CO2回収貯留量ともに、2017年をボトムに4年連続で増加しており、特に昨年1年間で、施設数は71増加している。


図2 商用CCS施設の分布 [拡大画像表示]

 新規に数えられた施設は、北米地域で41、欧州地域で25、その他の地域で5、図2に示されるように北米と欧州にCCS施設が多く立地している。昨年以来、新たに、ベルギー、デンマーク、ハンガリー、インドネシア、イタリア、マレーシア、スウェーデンで、最初の商用施設の計画・開発が始まっている。CO2の回収源として、過去は、天然ガス処理、肥料や化学品製造プラントや発電所などが主であったが、最近の新たな動きとして、LNG液化プラント、DACCS(Direct Air Capture CCS)施設、ブルー水素やセメントプラントへのCCSの商業適用に向けた建設工事が開始されている。

 筆者は、2012年よりGlobal CCS Instituteに所属し、世界のCCSの変遷を目の当たりにしてきたが、2015年~2017頃は、米国や欧州で計画中の大規模CCSプロジェクトが相次いで凍結あるいは中止され、CCSへの関心が薄れた時期であった。しかし、図1に示されるトレンドでも確認できるように、2018年以降、新たに計画あるいは開発されるプロジェクト数が順調に増加してきている。特に、昨年以来、世界各国あるいはグローバル企業の多くが、2050年ネットゼロにコミットする方針を打ち出してきており、わが国でも、2020年10月、菅前総理が当時の所信表明演説で、「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことはまだ記憶に新しい。

 CCSが将来のカーボンニュートラルに必要不可欠であるということは、例えば、国際エネルギー機関(IEA)もその重要性を認めており、同機関の報告書「Net Zero by 2050 – A Roadmap for the Global Energy Sector」によると、2050年のネットゼロ排出量を達成するシナリオでは、CCUSでセメント製造業や発電施設から76億トンのCO2を回収し、そのうちの95%を貯留(CCS)すると想定している(同報告書Table 2.9 Key global milestones for CCUS参照)。一方、現在、商業規模で稼働している世界のCCS施設は、図1に示すとおり27件、それらによって回収貯留されるCO2は合計約4,000万トン、計画段階の施設も含めると約1.5憶トンである。現在を起点に2050年までに、CCSの施設数、貯留量ともに急激に、すなわち100~200倍に増加させなければならず、CCSの開発・展開を一層加速させる必要がある。このため関係各国は、官民パートナーシップや民間が投資しやすい環境を整えるという重要な役割を担うことになる。これには多くの要素があるが、CCSビジネスに投資を呼び込むために、各国政府や政策当局がやらなければならないことは以下のように考えられる。

各国の排出削減目標を達成する上での CCS の役割を明確に定義し、産業界と一般市民の合意を得て、民間が投資できる機運を醸成する。
CCSがビジネスとして成立し得る収益構造を構築する。
CO2貯留サイト特定のための地下探査・貯留層開発を支援する。
CCSに関する透明性の高い法規制を整備し、コンプライアンス要件と長期責任を明確化し、事業者のビジネスリスクが効果的に軽減できるようにする。
気候変動政策の支援対象からCCSが除外されない - 地球温暖化ガス削減にはあらゆる選択肢が必要であり、その中でCCSも公平に扱われなければならない。
CCSネットワーク(ハブ&クラスタータイプのCCSプロジェクト)の構築を支援する。CCSネットワークは、インフラを共有することにより、コストとリスクの大規模かつ効果的な削減が期待できる。
CCS施設がそれぞれが軌道に乗るまで、必要に応じて、スタートアップの助成金や有利な条件の資金環境を提供する。

 これらのことは既に世界のいくつかの国、地域で、多様な形で実施されていて、それがCCSプロジェクトの実現を大きく後押しし始めている。CCSは、CO2の回収、輸送、貯留というチェーンで構成されていて、我が国では、CCSに関わる民間企業は、いずれのセクターにおいても世界に伍してあるいはリードする技術と実績を有している。反面、世界に対して遅れをとっているのは、CCSビジネスの環境整備であり、CCSに対する明確な政策、関連法規制整備、経済的支援策、社会的な認知度向上など、これらに対して、官民一体となって緊急性を持って取り組んでいくことが今求められている喫緊の課題である。のんびりはしていられない、正に、Do it now!である。