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水力発電と浮体式太陽光発電(PV)の組み合わせ


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 昨年9月、米国の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が出したレポートに興味を惹かれた。世界に多く稼働中のダム式水力発電所の水面に、浮体式のPV設備を設置すれば、年間10,610TWhの発電量を確保できるというものだ。それと対比する数字として示されていたのが、IEAが2018年に示した最新の資料による世界の年間最終電力消費量が22,300TWhだったというもので、半分近くの電力を供給できる潜在能力があるとしている。浮体式をダム湖の水面に取り付けるのに伴う制約条件や経済性を勘案すると、楽観的数字だという意見もNRELの内部にもあるようだが、想像以上に大きな発電量を確保できそうだということは言える。

 筆者が住む地域にある池に、かなり前から浮体式のPVがあるのを見ていたから、浮体式そのものには全く違和感はなかったが、それを水力発電所のダムに設置するのは、未利用の資源利用として有効性が高いものであることを認識させられた。先のレポートには、この方式は米国ではまだ手が着けられていないとあったので、日本ではどうかをネット検索で調べて見た。事例として見つかったのは、東京湾に近い千葉県の丘陵にあるダムを利用した「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」。2018年3月から運転を続けているが、合計で5万枚を超える太陽光パネルを水面に浮かべて、発電能力は13.7MW(メガワット)に達する。水上の太陽光発電設備としては日本最大のようだ(2019年の台風15号で一部が破損の被害にあった)。

 この情報に参考として出されていたのが中国の事例で、石炭の産地として知られる安徽省にある淮南市。同市では、多雨な気候も影響して石炭の露天掘跡地に水が流れ込み、水深4~10メートルの巨大な水たまりができていた。炭坑跡であるため水には炭塵が混ざって水質汚濁が進み、一帯は使いものにならない場所となっていた。この巨大な水たまりに設置され、2017年5月から稼働している浮体式水上メガソーラーの出力は70MW。

 だが、この2つとも水力発電所のダムを利用したものではなかったので、水力発電所事例がないかと探してみた。そうすると、ロシアの極東アムールのNizhne-Bureyskaya水力発電所(320MW)のダムに52.5kWの浮体式PVが2020年に設置され、発電所設備向けの電力として使われていることが分かった。ロシアでの第一号だそうだ。さらに、ブラジルのBatalha発電所(52.2 MW)に3組の浮体式を合わせて30MWという発電所本体の出力規模に近いものが同じく2020年から一部稼働し始めている。また、イタリアのEnel社がシシリーで、3種類の浮体式PVを実証試験中だ。そしてさらに、国営タイ発電公社(EGAT)は2019年、2037年までに、水力発電ダム9ヶ所の水上に合計16の浮体式太陽光発電所を設置する計画を発表している。完成すると総設備容量は2.7GWとなり、タイは世界最大の浮体式水上太陽光発電保有国となるようだ。

 NRELによると、世界にある水力発電所の淡水ダム湖のうち379,068カ所には、浮体式PVを設置できるとしており、設置に必要な条件を満たしているかどうかを調査する必要はあるものの、この方式に共通する利点があるという。まず、既設の水力発電所用に送電線が設置されているために、新たな送電線を設置する必要性が小さいということが総コスト引き下げ効果を発揮する。また、ダム式水力発電所は、乾期には発電量が落ち、雨期にはフルに発電するが、浮体式PVの場合、乾期には晴天が多いから発電量が多く、雨期には少なくなるため、相互補完的稼働をすることになる。また、天候に左右されるPVの出力変動を、一体で運用される水力発電が抑制することもやりやすい。揚水発電と組み合わせれば相性は抜群になるだろう。さらには、PVパネルが水上にあるために冷却され、発電効率を高く維持できるという利点もある。

 いまメガソーラーを設置できる適地が少なくなっている日本で、水力発電所のダムを利用する方式を検討する価値はあるように思えるし、おそらく計画中のものがあるに違いない。水力発電事業者の合意を取り付けることが出来れば、利害関係者の数も少ないだろうから、案外この方式は日本でも普及するのではないだろうか。脱炭素に向けて効果的な新しい拠点として期待したい。


出典:Hanwha Q Cells
ブラジルの浮体式太陽光発電システム

【参考文献】