日本橋スマートエネルギープロジェクト
三井不動産株式会社
Mitsui Fudosan Co., Ltd.
「日本橋スマートエネルギープロジェクト」は、東京都中央区日本橋室町の新築ビル「日本橋室町三井タワー」内に「日本橋エネルギーセンター」を設置し、周辺地域に電気と熱を供給する事業です。東京ガスとの共同事業で2019年4月1日から稼働しています。
高い耐震性の実績がある中圧ガス導管から引き込んだ都市ガスを燃料とする大型CGS(コジェネレーションシステム)を導入し、系統電力による電源と合わせて、日本で初めて既存ビルを含む地域の電源を多重化しました。広域停電時にも電力を継続的に供給し、地域のエネルギーレジリエンスを向上させることにより、災害に強い、国際競争力の高い街「日本橋」を実現します。
また、CGSの廃熱と高効率熱源設備を活用した熱供給事業を実施し、エネルギーを地産地消すること、日本で初めて既存ビルを含む地域の熱源設備を情報ネットワークで結び最適運転制御することにより、供給エリアのCO2排出量を約30%削減します。
1.エネルギーを街ごとリニューアル
三井不動産は、エネルギーや環境問題、少子化・高齢化、産業の新陳代謝といった社会的な課題を、街づくりを通して解決し、「持続可能な社会の実現」に貢献しています。また、日本橋では「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに「日本橋再生計画」を進めています。オフィスビル・商業施設等が集積する日本橋のような都心部におけるスマートシティの推進は、安定した経済活動・都市機能の維持という観点から喫緊の課題であり、その実現のためには面的なエネルギーレジリエンスの向上が必要と考えています。
東京ガスは、「国土強靭化基本計画」においてエネルギーにもレジリエンスが求められる中、阪神・淡路大震災や東日本大震災規模の地震においても、安定したエネルギー供給を実現する都市ガスのパイプラインを整備するなど、対災害性の強化を図るとともに、自立分散型電源であるCGSを導入しています。また、エネルギーを有効利用する電気や熱の地域エネルギー供給についても約半世紀にわたって取り組んでおり、都市におけるエネルギーレジリエンス向上と環境共生の実現をめざします。
本事業は、面的なエネルギーレジリエンスの向上と地球環境に優しい街の実現が日本の都市にとって大きな課題と認識している三井不動産と東京ガスが、両者の強み・ノウハウを活かして、既存ビル群も含めエネルギーを街ごとリニューアルする日本初の取り組みです。
2.重要文化財を含む街全体のエネルギーレジリエンス向上
三井不動産と東京ガスは、大型CGSを日本橋室町三井タワーに設置するとともに、地下に独自に張りめぐらせた自営線により周辺ビル・商業施設に向けて平常時、非常時ともにエネルギー供給を行う、日本初のエネルギーネットワークを構築しました。
導入した大型CGSは災害時の信頼性が高い中圧ガス導管を活用して発電しており、広域停電時にも街全体のBCP(Business Continuity Plan)に必要な電気の供給(年間ピークの50%相当)が可能となります。供給対象は三井本館や三越日本橋本店本館といった重要文化財や、武田グローバル本社を始めとする既存建物約20棟・延床面積約100万m2です。また、帰宅困難者を収容する一時滞在施設にもエネルギーを供給し、街全体のエネルギーレジリエンスを向上させ、安心・安全な街づくりに貢献します。
中圧ガス導管は、大きな地盤変動にも耐え得る強度や柔軟性に優れた「溶接接合鋼管」を採用しており、基本的にガスの供給が停止することはありません。阪神・淡路大震災や東日本大震災においても高い耐震性が確認されており、災害時でもエネルギーの安定供給が可能です。また、中圧ガス導管はループ化され、複数の供給ルートが確保されているので、高い供給安定性を保持します。
<供給能力>
電力 約4.3万kW
冷熱 約110GJ/h
温熱 約60GJ/h<設備概要>
ガスエンジン 7,800kW×3台
廃熱ボイラ 4t/h×3台
廃熱投入型蒸気吸収式冷凍機 1,400RT×3台
ターボ冷凍機 1,350RT×2台、800RT×1台、300RT×1台
蒸気ボイラ 3t/h×2台(ガス専燃)、2t/h×3台(ガス/油切替式)
3.省エネ・省CO2を実現するエコフレンドリーな街づくり
本事業では以下の3点を通じて、省エネ・省CO2を実現します。
(1)地域内に発電所を設けエネルギーを地産地消
(2)発電時に発生する廃熱を利用した熱供給事業
(3)情報ネットワークを活用した「日本橋エネルギーマネジメントシステム」を構築
① エリア内の負荷予測を行いCGS・熱源機器を最適運転
② 既存ビルの熱源設備で従来廃棄していた熱を有効活用