【完全版】海を救え プラスチックのリサイクルは廃止に

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(英 Global Warming Policy Foundation(2019/06/19)より転載
原題:「SAVE THE OCEANS Stop recycling plastic」)

 海洋プラスチックゴミ危機が宣言され、世界中のマスメディアがこぞって一面でこれを報道してきた。欧州連合 (EU) など各種アクターは、海洋ゴミに宣戦布告した。年間で 1,000 億トンものプラスチックゴミが海洋に捨てられ、野生生命に被害を与えている。国際廃棄物協会(ISWA)――この分野で最も能力の高い専門家組織――は海洋ゴミ危機の起源を次のようにまとめている。

『低所得経済から中高所得経済における陸地起源の海洋ゴミの75%は、塵芥と未収集廃棄物に由来しており、陸地起源の海洋ゴミの残り25%は廃棄物管理システム内から漏出するプラスチックである。』

 言い換えると、ISWA 報告によれば漏出の 25%はエコイデオローグたちの好きなゴミ対応方式から生じている。これに対し、自治体ゴミ (MSW) と下水汚泥を一緒に焼却すれば、あらゆる漏出が防げる。それなのに、エコイデオローグたちは強硬に焼却に反対するし、EUもまたサーキュラー・エコノミー(循環型経済) という幻想を信じこんで、焼却を嫌う。
 海洋ゴミ問題の大半は、沿岸部や川沿いの町や都市部でのゴミ収集不備によるものだ。これはアジア地域で顕著であり、少し劣るがアフリカでも見られる。この問題は、中国で特に激しい。都市衛生政策は、もともと開発アジェンダの根幹だったが、「サステイナビリティ/持続可能性の母」と呼ばれるノルウェー首相グロ・ハーレム・ブルントラントが、それを一存で世界評議会の作業計画から外させ、1987年報告書にも含めなかったため、無視されるようになった。この報告書は、国連総会での「持続可能な開発」目標の採用につながったことで有名だ。
 本報告は、EUの誤謬だらけの廃棄物政策が持つ、愚かしさ非効率性、二重や時に三重もの廃棄物管理構造、そしてそこから生じるひどい結果 (たとえば2008年ナポリの壮絶なゴミ危機)、そうした廃棄物政策がパリ協定の実施に役立つという事実無根の主張、さらに中国への年300万トンものプラスチック投棄と、それがもたらす海洋環境と健康へのひどい影響を述べる。
 EUはいまや―――サーキュラー・エコノミーの名の下に―――EU加盟7カ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、ドイツ、オランダ、スウェーデン) で実施されている、非常に成功した焼却方針を冷遇しようとしている。こうした国々はどれも、大規模な焼却能力を持ち、いまや自治体廃棄物の3%を埋め立てるだけですんでいるのだ。

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海を救え プラスチックのリサイクルは廃止に(PDF)

【 著者紹介 】
 ミッコ・ポーニオ (Mikko Paunio) MD, MHSは 1961 年フィンランドのトゥルク生まれ。ヘルシンキ大学を卒業し、同大学で 1990 年に博士号を取得。1991年にブリュッセル自由大学でポスドク研究を行い、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学校を 1993 年に卒業 (保健科学修士)。公衆衛生の認証専門家 (ヘルシンキ大学、1999) であり、ヘルシンキ大学で一般疫学の非常勤教授を務める。
 学者一家の出身であり、社会民主党員の三代目。1977 年にフィンランド社会民主党に入党。これまで以下の機関に勤務 : フィンランド保健厚生研究所、ヘルシンキ大学、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学校、欧州委員会、世界銀行、フィンランド社会問題保健省。アメリカ科学保健評議会の科学政策諮問委員会委員。全米保健研究所アメリカ医学図書館に、刊行物40点が所蔵されている。
 過去20年間にわたり、健康保護の観点からEUおよび世界の廃棄物政策問題に関する議論に注目し、活発に参加してきた。

解説:国際環境経済研究所 理事長 小谷 勝彦

 国際環境経済研究所でとりあげ、皆さんから好評を博した標記論文 (Global warming Policy Foundationの報告書) の全文を日本語で読みたいという要望が多く寄せられた。

 今般、山形浩生氏の翻訳で公表されたことから、ここにGlobal warming Policy Foundationの許可を得て、全文を皆さんにご紹介する。

 既報の「海を救え。プラスチックのリサイクルは廃止に」(ミッコ・ポーニオ)と合わせてご覧ください。

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