スマートメーターの普及


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 英国のガス・電力市場局(Office for Gas and Electricity Market)は、ほぼ毎日事業者や消費者向けに、発表や情報提供をEメールで行っている。昨年11月1日に出されたものの中に、英国のスマートメーターの設置を2020年に完了させるという目標達成が難しくなっていることを伺わせるレポートがあった。

 スマートメーターは、電力メーターだけでなく、ガスメーター、水道メーターなどの計量装置を電子化したもので、消費量を30分単位というような短い間隔で測定し、遠隔地にある情報収集場所にデジタルデータとして送り、人手を介することなく消費量をオンラインで把握できる。そして、刻々変化する消費量を絶えずチェックすることによって、必要があれば消費者に向かって消費を抑制(増加もありうる)させるように指示するシグナルを送ることができるようになっている。

 英国では、大手の電力・ガス事業者にスマートメーターの取付を義務づけしていて、2020年迄に全数取付を済ませるという目標を設定しているが、その進捗は進んでおらず、取り付け促進を検討する委員会が2015年12月と2017年の1月に設置義務違反としてブリティッシュ・ガス、E.Onに700万ポンド、npowerに対して450万ポンドの罰金を課している。そして、2018年9月には、npowerにさらに240万ポンドの罰金を課している。

 取付の進捗状況から見て、当初の目標を達成するのはまず無理という状況になっているが、当局は電力・ガス事業者に一層の、そして、最善の努力をするように要請している。昨年発表されたデータによると、全体で電力・ガスを合わせて4.600万個ほど(電力2,500万、ガス2,100万)のメーターがある中で、取り付け実績は下図のようになっている。右が電力、左がガスの数字だが、双方ともまだ全体の4分の一ほどしかスマート化されていない。

出典: Smart Meters   Quarterly Report to end September 2018

出典: Smart Meters Quarterly Report to end September 2018
(Department for Business, Energy & Industrial Strategy)

 スマートメーターの規格が一度改定されているが、それも遅れに影響しているようだ。また、取り付け先である顧客との交渉が円滑に行かず断られるケースも多いようだし、さらには、古いメーターとの取付互換性がないこともあるというのは意外な感じがする。だが、現時点で英国政府は当初目的を変更することなく、事業者のさらなる努力を要請している。

 英国はこのような状況だが、EU各国の間では、スマートメーターの取り付け進捗度には大きな差が見られる。EUは2032年迄に取付を終わるという目標を示し、各国に推進策の策定を要請しているが、現時点で欧州各国のスマートメーター化には大きな差が見られる。イタリアはかなり早い段階で電力メーターのスマート化100%を達成した。それは、電力事業が盗電の頻発に悩まされていたのが、スマート化によって盗電が難しくなり、結果として電力事業の収益性が高まることから、強力に推進されたためのようだ。現在は第二世代のスマートメーターを取り付ける段階に入っている。それに対し、再エネの導入が進むドイツでは、その進捗度は極めて低く、現在大口の電力消費事業者へのスマートメーター取付が始められた段階だ。これほどの遅れが出たのには、議会が消費者のプライバシー保護の観点から、当初設置に同意しなかったからだ。

 日本の状況を電力について見ると、事業者によって若干時期に違いはあるが、2020年から2024年の間に電力用スマートメーター取付を終了する計画になっている。ガスについては、異常(漏洩、地震)を検知して供給を止めるマイコンメータは普及しているが、本格的なスマートメーター取付はこれから始まる段階にあるようだ。電力事業者の中で最も取り付け比率が高いのは関西電力で50%を超えているが、今後日本の電力・ガス事業に要請されるのは、データ収集利用機能を高度に発揮させて、エネルギー消費効率が高いスマート社会実現の一翼を担えるようなシステムを開発導入することだろう。