家庭での災害への備え
中島 みき
国際環境経済研究所主席研究員
2018年9月4日午後、近畿を縦断した超大型の台風21号。被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
今回の台風21号は、最大級の規模であるといった予報が発信されていました。しかし、(常日頃から備えのあるご家庭ももちろんありますが、)自身も含め、停電等に対する十分な備えがなく、戸惑った方々の声も多く聞かれました。
電気が止まると、マンションなどではポンプが作動せずに水が使えない、ガス湯沸かし器のリモコン、テレビ、固定電話などが使えない、といったことも起こりえます。今回の災害を通じた周囲の声を振り返り、今後の万が一の備えに向けて紹介したいと思います。
(i) 災害の前に
今回の経験を通じて、停電対策として特に気を付けておきたいと感じた点は、以下のとおり。
- ○
- 保冷剤を多めに冷やしておく
一時的な食品の維持や、夏場の暑さ対策に使える。なお、万一、停電した場合は、冷蔵庫の開閉を控えて、庫内の温度上昇を可能な限り避ける。 - ○
- 明かりは懐中電灯など、安全性に配慮したものを用意する
ろうそくの火を灯したまま就寝し、火災を招いたケースもあった。なお、懐中電灯は比較的電池を消耗するのが早いので、予備の電池も併せて用意しておくと安心だ。
家庭内を歩くときに、停電時に自動的に点灯するタイプの足元灯も有効である。足元灯の設置が難しい階段などには、蓄光テープも効果がある。 - ○
- 食料・飲料・生活必需品などを備蓄する
飲料水は、1人1日3リットルが目安とされている。非常食としては、アルファ米、ビスケット、板チョコ、乾パンなど。なお、飲料水とは別に、トイレの水を流すなどのために、お風呂にお水を貯めておくなどの用意もあるとよいだろう。
詳細は、官邸ホームページ「災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」などが参考になる。
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html#c2
(ⅱ) 情報の入手はどうする?
万一、テレビが使えなくなったらどうするか。携帯電話は使えるとの声もあったが、その場合も、バッテリーの消耗は思いのほか早く、今回、家族と連絡が取れないケースもあった。省電力設定にする、画面を暗くする、不使用時には機内モードに切り替える、といった設定上の工夫に加え、リチウムイオン電池の携帯充電器などのポケットチャージャーを用意し、予め充電しておくことをおすすめする。ラジオも、予備の電池と共に準備しておくと安心だ。
(ⅲ) トイレの水はどうやって流す?
メーカーのホームページによれば、一般に、停電でリモコンにより水が流れなくなった際には、バケツ1杯の水を一気に便器に流し込む。具体的には、機種により異なるので、個別に詳細確認が必要である。予め災害が想定される場合には、飲料水の確保とは別に、お風呂に水を貯めておくなどの備えをしておくとよいだろう。
但し、地震などで排水管が破損している恐れのある場合は、汚水が逆流する危険性があることから、トイレに水は流さない。
TOTO:https://jp.toto.com/support/emergency/dansui_teiden/index.htm
LIXIL:https://faq.lixil.co.jp/faq/show/5637?site_domain=default
なお、復旧後に使用する場合の注意点として、給水管に空気がたまり、水圧で圧縮された空気が器具を破損する場合があるので、あらかじめ空気を抜くなどの対策が必要とのことであり、メーカーのホームページ等を参照しておきたい。
https://faq.lixil.co.jp/faq/show/11149?site_domain=default
(ⅳ) 災害の後に ~2次災害にご注意を!~
災害により停電した後、復電する際に発生する火災に注意したい。通電火災が注目されたのは、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の時である。当時、電気ストーブなどの電熱器具を使用していて停電し、可燃物がヒーター部分に接触した状況になったまま、復旧後、再度通電することで、可燃物が過熱されて出火し、火災を招くといった事例が相次いだ。阪神・淡路大震災では、出火原因が確認された139件のうち、85件が電気関係による火災であったとされている。家を出て避難する場合は、必ず分電盤(ブレーカー)を落としておきたい。
この通電火災防止対策の一つとして、内閣府・消防庁・経済産業省等は、地震を感知すると自動的にブレーカーを落として電気を止める「感震ブレーカー」の普及啓発を行っている。なお、分電盤やその周囲が水濡れしている場合は火災を防げない可能性もあるので、十分な注意が必要である。
今回の台風21号では、建物の外壁に敷設された電気配線の被覆が強風により破壊され、復電した際にショートして出火するといった事例もあった。水に濡れた配線・電気器具、本体やコードに損傷のある電気器具は危険なので使用しない、また、切れて垂れ下がった電線は感電の恐れがあり危険なので絶対に触らない、といったことも注意したい。
次に、太陽光発電システムについて、浸水した発電設備は、感電の恐れがあるため、近づかない。水が引いた後でも、パワーコンディショナー等内部に水分が残っていると、感電するリスクがあるため、復旧作業にも注意が必要である。
最後に、車両に関する注意点として、浸水した車両は、水が引いて外観上問題がなさそうな状態でも、感電事故や、電気系統のショート等による車両火災が発生するおそれがあるので、エンジンをかけない。また、使用するまでの間、発火するおそれがあるので、バッテリーのマイナス側のターミナルを外す。
おわりに
台風21号による関西エリアの停電は、9月20日に全て解消しました。こうした長丁場では、家庭での備えにはもちろん限界もあります。
筆者は、「今回、準備しておけば良かった」との周囲の声をお届けするとともに、二次災害などの注意点をお伝えし、未然に防げる災害を少なくできればと思い、寄稿しました。