温暖化の政策科学
イノベーションによる温暖化問題解決のあり方は
イノベーションシステム論から複雑系理論へ
杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
地球温暖化対策の解決に向けたイノベーションのためには、政府の積極的な介入が重要とされてきた。即ち、太陽電池等の有望技術を特定した上で、研究開発補助や再エネ全量買取り制度等の、技術開発政策を実施することが広く行われてきた。この理論的根拠となってきたのは、「イノベーションシステム論」であった。だが近年のICT等のイノベーションを観察すると、温暖化対策技術のイノベーションにとってより本質的なのは、対象を特定した政府の技術開発政策ではなく、科学技術全般の進歩であることが強く示唆される。この状況を記述する適切な枠組みは「複雑系理論」であり、これに立脚すると、全く異なる政策的示唆が得られる。即ち、温暖化対策技術のイノベーションを起こすためには、科学技術全般のイノベーションが重要であり、後者は経済成長との好循環において実現される。故に、温暖化対策は、経済成長と調和する形で実施しなければ、長期的な実効性を損なう。
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