第7回 さらなる技術開発で天然ガスシフトをリードする〈前編〉

一般社団法人日本ガス協会 環境部長 前田 泰史氏


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――都市ガス製造に係わるCO2排出の実際の削減量は?

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前田:都市ガス製造に関わるCO2目標と実績の推移のグラフを見ていただきたいと思います。目標は2つありますが、メインの目標が都市ガスの製造にかかるCO2の原単位になります。グラフの赤のラインが1m3の都市ガスを作るのに、どれだけCO2が製造工場で排出されたかです。基準年の90年が87.2に対して、現在は8前後ですので、9割以上の削減を実現したことになります。これはLNGへの原料転換を中心に、過去に非常に大きな削減をしてきたわけです。(図1)

 グラフの緑のラインが製造量ですが、コージェネレーションの普及や天然ガスへのシフトが進むことによって、製造量は増えていく見通しです。それに伴い、製造工場からの都市ガス送出圧力の上昇等によりCO2の原単位は、2020年に向かって微増することになります。今後の課題は、更に省エネ対策を推進することにより、この微増を抑えることが重要だと考えています。他方、製造工場でのCO2は微増する見通しですが、お客様先では、コージェネレーションや天然ガスを使ったシステムを導入することにより、製造工場のCO2増加量の100倍以上となる最大6200万t超のCO2を削減できると考えています。日本全体で見ると、天然ガスをよりたくさん使って頂くことによりCO2の削減に大きく貢献できると考えています。(図2)

図1(図1)都市ガス製造に係わるCO2目標と実績推移
出典:日本ガス協会
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図2(図2)都市ガス消費段階(お客さま先)でのCO2削減への貢献
出典:日本ガス協会
※グラフの青のラインが製造工場でのCO2の排出量、赤のラインがお客様の先でのCO2の削減
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――熱需要の天然ガス転換により、今後省エネが進むことが期待できますね。

前田:産業用を中心とした熱需要の天然ガス転換は、「A重油と従来バーナー」を「天然ガス化」し、さらに「バーナーの高効率化」を図ることで大幅なCO2削減ができます。重油から天然ガス化をするだけで25%のCO2を削減できますが、国の助成を頂きながら、メーカー様や都市ガス会社が技術開発してきたリジェネレーティブ・バーナーを導入すると、さらにCO2削減が可能です。これは、燃焼した後の排ガス中に含まれる熱を回収して、再利用するというシステムですが、従来に比べて55%のCO2削減が期待できます。(図3)

図3(図3)熱需要の天然ガス転換と高度利用 出典:日本ガス協会[拡大画像表示]

燃料電池の開発状況

――産業用・業務用の燃料電池の開発状況は?

前田:三浦工業、富士電機、日立造船、三菱日立パワーシステムズ、京セラなどのメーカー様が中心となり、工場、飲食店、病院などを対象に、業務用・産業用の燃料電池の技術開発が進められている状況です。(図4)

図4(図4)業務・産業用燃料電池の開発・実用化の動き
出典:日本ガス協会
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 歴史を振り返ると、時代の変遷の中で、メーカー様と共に、新しい技術と商品の開発を進め、需要を開拓してきました。都市ガスの本格的な利用は、ガス灯が始まりですが、それが電灯に駆逐された後、厨房分野では、かまどのバーナーから始まったものがコンロに代わり、給湯分野では、風呂釜のバーナーから始まったものが給湯器に代わっていきました。
 燃料電池についても、仕様の検討に加え、材料開発、シミュレーション、評価試験等により、どんな材料や構造にすれば耐久性や性能が上がるのか、メーカー様任せではなくガス業界も自ら汗をかいて取り組んでいるのが我々のDNAとも言えます。

後編に続く)

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