米国の原子力を取り巻く動向(2)

ユッカマウンテン計画の中止、その後の動向


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

印刷用ページ

 今年2月のワシントンD.C.でのヒアリングでは、米国の大統領選の行方や最近のエネルギー事情、自動車政策、環境政策のほか、原子力発電の使用済燃料の最終処分に関する最近の動向についても聞いている。米国内の原子力発電所の動向については、「米国の原子力を取り巻く動向(1)」にまとめているが、今回は最終処分場問題についてヒアリングした内容をもとに報告したい。

 米国では、原子力発電所によって発生する使用済燃料は、再処理せずに地層処分注1)することが前提とされている。米国内に原子力発電所から発生した使用済燃料は、2013年末で合計約71700トン蓄積されていると見積もられている。

 1982年に成立した放射性廃棄物政策法に基づき、ネバダ州のユッカマウンテンを唯一の最終処分候補サイトとし、探査研究施設(ESF:Exploratory Studies Facility)の建設が行われた。(1997年完成)ユッカマウンテンは、ラスベガスの北西160kmに位置し、ネバダ核実験場と空軍訓練場に隣接する砂漠地帯にある。地層処分を行う地下200~500mの岩種は凝灰岩注2)である。

special201603009_01

ユッカマウンテン(ネバダ州)出典:DOE

 探査研究施設(ESF)は、深度約300m、坑道の延長は約7.9kmあり、地下の岩盤特性や水理地質学的特性に関する調査や試験などが行われた。

special201603009_02

ユッカマウンテンの探査研究施設(ESF) 出典:Yucca Mountain Organization

 約20年間の調査研究の後、2002年に連邦議会の承認を得て、ユッカマウンテンは高レベル放射性廃棄物および使用済燃料の最終処分場として決定された。2008年に米エネルギー省(DOE)は原子力規制委員会(NRC)に建設許可に係る許認可申請を行い、手続きが進められた。計画では、2012年10月から処分場の建設を開始し、2019年10月には初期操業のための建設が完了し、2020年3月に処分場の操業を開始する予定であった。

注1)
地層処分とは:高レベル放射性廃棄物が強い放射線を出し、その放射能レベルが十分低くなるまでには長い時間がかかるため、数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、管理する必要がある。地層深くに高レベル放射性廃棄物を埋めて処分する方法
注2)
凝灰岩とは:火山灰などが固結した岩石