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経済成長はギブアップ

-2050年温暖化ガス▲80%削減の世界-


国際環境経済研究所理事長


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(社会構造のイノベーションを起こして、2050年にCO2を▲80%削減しよう)

 懇談会では、将来のあるべき姿から逆算して-バックキャストして、従来やれなかった社会構造のイノベーションを起こそうと提案している。

 問題は、「意気込み」が「必達目標」になってしまうことである。

 かつて、我が国では、環境目標を高く掲げて公害を克服してきたという神話がある。
 大気などの環境規制は、技術革新により公害物質を除去することができた。

 ところが、温暖化問題はエネルギー問題であり、人が生きていくために必要なエネルギーは公害物質のように除去できる訳ではない。

 プレッジ・アンド・レヴューがCOP21で採用されたのは、温暖化対策が、各国の事情に合わせた地道な取り組みが最もふさわしいからである。
 ところが、今でも京都議定書の法的拘束力に郷愁を覚える人がいる。法的拘束力をかけてCO2削減の担い手に圧力をかけようとする。
 経済成長と矛盾する「2050年温暖化ガス▲80%削減」という「チャレンジ目標」を盾に、鞭をたたいて国民にチャレンジさせる。
 どこかで話題になった「チャレンジ!チャレンジ!」で、やらされる人たちが疲労困憊してしまうことにならなければよいが。

(2050年温暖化ガス▲80%削減は「閣議決定」で決まったらしい)

 懇談会の書きぶりを見ると、「閣議決定した」というくだりがやけに出てくる。
 「第4次環境基本計画(平成24年4月27日閣議決定)において2050年までに温暖化ガス80%削減を目指すこととしている」という表現や、注釈でも「平成26年版環境白書においても、同趣旨を閣議決定している」とある。

 第4次環境基本計画は、民主党政権のもとで閣議決定されたものであるが、160ページに及ぶ大部であり、p5~6にかけて「2009年11月に発表された気候変動交渉に関する日米共同メッセージにおいて、両国は、2050年までに自らの排出量を80%削減することを目指すとともに、同年までに世界全体の排出量を半減するとの目標を支持することを表明した」というくだりがある。

 閣議の時間は、平均13分で、閣僚の発言の大半は事前提出した文書の朗読だそうだ。(2015年5月11日、毎日新聞)

 環境基本計画は環境省の基本計画であり、我が国の縦社会構造を考えると、他省庁の大臣が領空侵犯して、環境基本計画の文章にまで口出ししないだろう。
 しかも、たった10分ほどで決定された「環境省の環境基本計画の閣議決定」を錦の御旗にして、国民経済・社会に大きく影響を与える温暖化方針が、今度は「国の温暖化計画」にスーと入ってしまうのが、我が国の意思決定プロセスのようである。

 2016年3月4日に開催された中央環境審議会地球環境部会/産業構造審議会地球環境小委員会の合同会議で「地球温暖化対策計画」が提出され、「長期目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」という表現が出てきた。
 先ほど懸念していたように、当初は「目指す」という表現が、今度は「長期目標」とい
う規範性を持った形になってきた。

 今後は、「地球温暖化対策計画」のなかで「長期目標」が閣議決定したから、これが規範となるだろう。

 「目標は高い方が良い」。技術はチャレンジしたいと思う。
 高い山を目指すのは良いが、高い山が「必達目標」として法的拘束力を持ち、この実現のために規制をかけたり、税金をかけたり、排出枠を決めて取引させたりと、国民に負担を強いることを心配する。

 温暖化問題は、科学・経済・社会のあらゆる分野に関係する総合科学だ。
 「2050年温暖化ガス▲80%削減」だけを主張することは、バランスのとれた成長を歪めるのみならず、成長しない国ニッポンを目指すことになる。

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