経済成長はギブアップ
-2050年温暖化ガス▲80%削減の世界-
小谷 勝彦
国際環境経済研究所理事長
(懇談会報告は、2050年、人口9700万人、GDPは年1.7%成長の900兆円になってもCO2排出が▲80%削減できると言っているようだ)
2050年には、日本は高齢化社会になっており、人口は1億人を切った9700万人になることが推定されている。(内閣府、高齢社会白書、2015.6.12)現在から▲23%の人口減である。
懇談会では、これを前提にして、一人あたりの温室効果ガスが、現状(2013年)11.1t-CO2/人から2050年には2.6 t-CO2/人になると予想しているようだ。
( 2億5000万トン/9700万人=2.6 )
現在のキューバ(2.64)やエクアドル(2.50)並みのCO2排出レベルの生活をすることを主張されているのだろう。
1990年以来25年間にわたって、一人あたりの温室効果ガスが10 t-CO2/人程度のレベルで推移している我が国が、35年後にどうして急に2.6t-CO2/人レベルまで持っていけるのか、大きな断絶がある。
(次のグラフは懇談会資料 p8による)
懇談会では、GDP当たりのCO2排出は、現状(2013年)の294 g-CO2/USDから2050年には約1割の32 g-CO2/USDになると試算している。
2013年の名目GDPが479兆円であるから、政府が前提としている経済成長率1.7%/年が持続すると考えると2050年には1.87倍の900兆円規模になる。
CO2排出量が20%になりGDPが約2倍になるから、GDP当たりのCO2排出量は10%になる計算だろう。
1990年以降25年間にわたって、日本のGDP当たりのCO2排出は300 g-CO2/USD付近を推移しており、今後35年間に急激に▲90%とマイナスになるのは、非連続な発想であり、極めて違和感がある。
(なぜ原単位が非連続に激減するのだろうか?
-GDPも人口もマイナス成長を前提にしていると思われる-)
過去の電力消費とGDPには強い相関があり、かつ、電力消費とCO2排出とは正比例である。
(杉山論文「省エネの「ダブルカウント」に要注意」(2015/2/20国際環境経済研究所)
原子力や再生エネルギーの増大により、電力消費とCO2排出の弾性値は小さくなっても、正比例であることから、GDP成長を目指すとCO2排出は当然、増大する。
特に、原子力発電の稼働が不確実な我が国にとって、再生エネルギーが増えても、この傾向は変わらず、弾性値がゼロになることは無理がある。
そう考えると、懇談会がCO2排出量を▲80%にするということは、GDPのマイナス成長を前提としていると思わざるを得ない。
また、CO2排出量を20%にするには、政府の想定以上に人口が大きく減少すると考えていると思わざるを得ない。
懇談会のなかで、「人口1億人ぐらいで安定することを国の政策にしているので、環境省が「もっと人口がへったほうがいい」とは言えない。従って、例えば1億人ぐらいで維持した場合は、人口が結構多いので、現状から80%削減することはそれだけ困難になる」という発言があったそうだ。