先進的な取り組みに注目!「バイオマス産業都市さが」


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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微細藻類培養によるマテリアル利用および燃料製造事業

 
 2014年2月8日、佐賀市は、ミドリムシの大量増殖技術をもつバイオベンチャーのユーグレナ(本社:東京)と共同研究契約を結びました。下水処理水や清掃工場の焼却炉から取り出した高濃度の二酸化炭素(CO2)をユーグレナに提供する予定です。

 藻類のミドリムシは、植物と動物の中間的存在で、CO2を取り込んで光合成を行い、バイオジェット燃料の元となる軽質油を産出することができます。ユーグレナは、2020年の事業化をめざし、石垣島(沖縄県)の生産拠点でジョット燃料の研究開発を行ってきましたが、第二の拠点として全国の自治体から誘致される中、佐賀市を選びました。ユーグレナが自治体との共同研究契約を結んだのは初めてのことです。

 現在、市内での新たな研究拠点は設計段階にあり、来年には着工する予定です。今回の研究では、下水浄化センターから排出される有機物を多く含む処理水や、清掃センターから回収するCO2を佐賀市が提供することにより、市場コストに見合う燃料開発につなげるステップにしたい考えです。佐賀市とユーグレナが連携することで、ミドリムシによるバイオジェット燃料の量産化が2020年のオリンピック開催までに実現することを期待したいです。

出典)ユーグレナ「ミドリムシ」

出典)ユーグレナ「ミドリムシ」

 佐賀市がバイオマス産業都市としてめざす将来像は、日頃の暮らしから発生するごみや排水、産業排水、地域の未利用木材などから、エネルギーを生み出し、自然と共存する都市の姿です。廃棄物であったものがエネルギーや資源として価値を生み出しながら循環する都市をつくっていく。つまり、普通の生活が地域の力になるわけです。

 ごみ処理施設や下水処理施設が、地域のエネルギーセンターへと転換することにより、地域経済が循環する仕組みをつくり、その循環の波が国内からアジア、世界へと広がるような「バイオマス産業都市さが」の実現をめざしています。

 清掃工場から直接CO2を取り出し活用しようとする試みは日本だけではなく、世界的にも例のない取り組みです。新たな施設をつくるのではなく、既存のごみ処理施設や下水道処理施設を上手に活用し、エネルギーを生み出し、回収したCO2を利用する企業の誘致や産業を創出していこうとする佐賀市の先進的な取り組みを、今後も注目していきたいと思います。

佐賀市チャンネル「バイオマス産業都市編」。佐賀市の環境・エネルギーの取り組みをコメディタッチで配信中。
この他、「藻類(ミドリムシ)編」など。