太陽光発電の推進は、ドイツを見習え!


国際環境経済研究所前所長

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 ただ、日本全体を見渡せば、周辺住民からこうした不満が出てこないケースもある。それは、これまでほとんど無価値だった土地が、固定価格買取制度のおかげで急に配当を生むようになったことで利益を享受しているのも、その地域の住民であることが多いという事情があるからだ。

 実は、ドイツでも、風力発電に反対する(低周波音や野鳥保護などの理由)人が多い中で、その導入を可能にしてきたのがいわゆる「市民ファンド」である。日本では、これをドイツは民主的に再エネを進めたという主張の根拠に挙げる人も多いが、実は風力発電導入の利益が入る市民に、反対派の市民の説得するインセンティブが生まれたというだけのことである。
 ドイツのヘンドリックス環境大臣が、昨年の温暖化国際会議COP20のサイドイベントで、まさにそのような趣旨の発言をしていたのを聞いて、私は目を丸くした。

 何もだからといって、太陽光の開発をやめろと主張しているわけではない。むしろこうした「乱開発」が横行することや無責任な事業者が多数参入することによって、再生可能エネルギーの一般受容性が失われていくことを懸念しているのだ。

 具体的な政策提案としては、次のような項目が挙げられる。

1)
50kw未満の太陽光発電設備を、建築基準法上の「工作物」とする
2)
同設備を電気事業法上の「電気工作物」規制にかける
3)
生態系への悪影響について、環境アセスメントを課する
4)
事業者の名称、連絡先、所在地などの情報開示と情報掲示を義務付ける
5)
市町村において、開発プロセスについての住民説明を義務付ける
6)
景観法、景観条例を適用する
7)
廃棄物になった際には、一般廃棄物か産業廃棄物か、どちらに当たるのかを明確にし、その処理責任を明示するとともに、費用の負担についてもあらかじめ事業者に責任を持たせる

 もちろん、こうした政策を実施するにはさらに詰めるべき点はある。だが、今はそのチャンスだ。現在行われようとしている固定価格買取制度の見直しのプロセスで、上記のような点についても同時に検討していくべきだと強調しておきたい。

 まさに、今こそドイツを見習え、である。