進む高齢化、省エネは健康志向をめざそう!


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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 久しぶりにダイアリーを更新します。今年も4月に新入生を迎え、新歓コンパなどの賑わいもあり、駒場キャンパスは活気にあふれています。オーラあふれる学生の彼らを見ているだけで、「私も頑張ろう!」という気持ちになります。(パワーは伝染していくのですね!)

 さて2015年度は、東京大学教養学部で4講座を担当することになりました。8月3日~7日開講予定の集中講座(英語での講義)のPEAK・ESコース「エネルギー資源論 II/GPES 「資源・エネルギー論II」(Introduction to Energy Resources II)、9月からの冬学期は「科学技術リテラシー論」と「エネルギー科学概論」、「再生可能エネルギー実践講座」を担当します。特に英語での講義は初めてですので、早めに準備を進めなければと気を引き締めています。

 さて、エネルギー・環境問題とは違いますが、最近気になったニュースについて。4月17日、総務省は昨年10月1日現在の推計人口を発表しました。在日外国人を含む総人口は前年比21万5000人(0.17%)減の1億2708万3000人で、4年連続で減少しました。15~64歳の現役世代である生産年齢人口は116万人減の7785万人。一方、65歳以上は110万2000人増の3300万人となり、初めて0~14歳の年少人口(1623万3000人)の2倍を超え、少子高齢化がまた進んだそうです。2030年には3人に1人が65歳以上の高齢者の超高齢社会が到来し、現役世代1.7人で1人の高齢者を支えていくことが予測されています。

 日本は長寿の国です。長寿はすばらしいことですが、できるだけ健康であることが大事というのは共通認識でしょう。ところが、厚生労働省が発表している「平均寿命と健康寿命の差(平成22年データに基づく)」によると、平均寿命と健康寿命(日常的に介護を必要とせず、自立した生活ができる生存期間)の差は、私が想像していた以上に開きがあり、結構ショックを受けました。

 平均寿命と健康寿命の差を縮めることができれば、当人や家族にとってもハッピーですし、社会保障など社会的なコストを抑え、現役世代の負担を軽減することにもつながります。家庭の中のエネルギー利用(省エネ、節エネ、創エネなど)についても、高齢者を擁するご家庭では健康に配慮することがとても大事なことだと思っています。

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 住宅の冬季と夏季の熱の出入りを見てみましょう。夏の屋外から屋内への熱の侵入の約7割、冬の暖房熱の屋外流出の5割以上は窓からです。快適な屋内環境を実現するためには、窓ガラスが重要だということがわかります。ガラス選びの基本は、優れた「断熱」性能を持つガラスを選ぶことです。

冬季・夏季の熱の出入り

冬季・夏季の熱の出入り

 そこでお勧めしたいのが、エコガラス(Low-E複層ガラス)です。Low-Eは、「Low emissivity(低放射)」の略。複層ガラスの内側に特殊な金属コーティング(Low-E膜)が施されていて、放射熱の伝わりを抑え、断熱性能を高めます。高い断熱性能に加えて、冬にできるだけ日射熱を取り入れるタイプと、夏に日射熱を適度に遮断するタイプの2タイプがあります。

出典:板硝子協会 エコガラス(Low-E複層ガラス)の断面図

出典:板硝子協会 エコガラス(Low-E複層ガラス)の断面図

 日射熱を取り入れるタイプと日射熱を適度に遮断するタイプのどちらも部屋と窓の温度差を小さくでき、結露を減らすことができます。結露はカビやダニの発生につながるため、結露を減らすことができれば、屋内の快適性が高まり、アレルギー症状の解消にもつながることが日本建築学会でも発表されています。また、太陽光には赤外線、可視光線、紫外線がありますが、エコガラスは可視光をよく通すため、屋内を明るく保つことができるメリットもあります。

 エコガラスは省エネ基準が厳しい欧州では広く普及していますが、日本の既存住宅ではアルミサッシと単板硝子やアルミ複合サッシと複層ガラスが一般的で、普及が遅れています。最近のハウスメーカーの新築戸建住宅では6割がエコガラスですが、新築の集合住宅ではエコガラスはまだ7%程度です。

 日本でも最近は急激な温度変化で体調が急変する「ヒートショック」の問題が指摘されるようになりました。冬に急増するのは、住宅内における循環器疾患起因死で、高血圧が主因です。入浴中の事故死だけでも年間1万9000人と推計されています。そうした中、断熱改修により起床時の血圧が低下したという実験結果もあり、住宅の断熱性能と健康との関連性が注目されています。

 今年4月から、「省エネ住宅ポイント」制度が再開されています。トップランナー基準などを満たす「エコ住宅の新築」と「エコリフォーム」が対象です。エコリフォームの「窓の断熱改修」では、窓の大きさ(寸法)などに応じて1枚あたり3000~2万ポイントが付与されます(工事着工・着手は2014年12月27日~2016年3月31日)。
(省エネ住宅ポイントホームページ:http://shoenejutaku-points.jp/

 こうした制度も上手く利用し、高断熱性能のガラスで室温差を緩和し、省エネを実現しながら健康的に長生きできる環境づくりを進めていけるといいですね!