桝本晃章 ブログ
COP21・パリ会議で、議長国フランスの柔軟な姿勢は活かされるか
桝本 晃章
国際環境経済研究所主席研究員、(一財)日本原子力文化財団 理事長
<議長国フランスの交渉責任者のスピーチ概要…共通認識「2020年までにGCFに1,000億ドルが必要」と語る>
フランスの交渉責任者Watokinson氏のスピーチは、COP21議長国としての重さがあるので、その概略をご紹介しておきたい。
Watokinson氏は、まず、
- ・
- 新しい協定は、長期的なもので、時間的経過とともに、有効さが増すようなものにしたい
- ・
- 同時に、新しい協定は、今後の状況変化に適合できるようなもので、5年後、10年後にも有効なものであってほしい
と志を語り、交渉上の主要点4つを次の通り説明した。
- ①
- パリの結論は、議定書:Protocolなのか、それとも他の形なのか。
いずれにしても、これまでの協定に基づき、透明性と説明力があり、法遵守型である必要があろう。核心は、2℃原則の維持である。 - ②
- 全員参加。大排出国のみならず、全ての国々が参加しなくてはいけない。
<GCF100億ドルは最初の一部。2020年までに累計1,000億ドル>
- ③
- 第3の重要点は、資金運用だ。既に、GCFには、100億ドルが集まることになっている。しかし、もっと大きな資金が必要だろう。2020年までには、1,000億ドルが必要だということで同意ができている。100億ドルは、その一部でしかない。資金は、官民の多様なソースから集められよう。
……筆者:日本は、100億ドルのうち、米国30億ドルに次ぐ二番目に大きい額:15億ドルの拠出国だが、今後、5年間のうちに総額1,000億ドルに!と聞くと、日本の拠出も巨額になると考えてしまう。さらに、筆者が不勉強だったのだが、このGCF事務局は、2012年、韓国の仁川(Incheon)市に設置されることが決定され、既に活動を始めているということである。 - ④
- 第4の要素は、“Agenda of Solutions”である。これには、協定を支える補完的な機能を期待する。政府と非政府関係者が、参加各国の約束を補助したり強化したりするものだ。
加えて、Watkinson氏は、炭素価格設定についてこう発言した。
「炭素に価格をつけることは、投資へのシグナルとして重要だ。そうかといって、COP21において、地球規模での炭素価格が実現できるとは考えていない。炭素価格は、協定に基づいて作られる各国あるいは各地域の政策の結果として生み出されるものだ。我々ができることは、これらを繋げることだ。」