再生可能エネルギー発電
…語られない“電気の質”と“原因者負担”
桝本 晃章
国際環境経済研究所主席研究員、(一財)日本原子力文化財団 理事長
“質の悪い”お天気任せの自然エネルギー発電
一言で、再生可能エネルギー発電と言うが、ここでは二つに分けて考えたい。バイオ燃料・小水力・地熱等の発電は、まず、ここで指摘する“電気の質”の問題はない。問題があるのは、お天気任せの“太陽光発電”と“風力発電”である。
この二つの発電による電気は、お天気任せだから、一言で言って“質が悪い”。質が悪いというのは、一般の皆さんが安定した電気を必要としているのに対し、太陽光や風力発電による電気は、瞬時瞬時に、また、一日の中でも日照や風の強さによって変動するわけで、そのままでは(スタンド・アローンでは)一般の需要には応えられないという意味である。
こうした質の悪さを良くするにはどうするか。それは、発電した電気を蓄電池に一旦貯めたり、一般の電線に繋いだり(系統電力への連係)する。こうすることによって、日照や風によって変動する不安定さが吸収され、ようやく質が整い安定化する。さらに、日照の無い時、風の無い時などには、蓄電された電気や系統電力が流れ込んで来るので、天気によって発電が無くなったり、少なくなったりしても、皆さんの求める電気に応じられることになる。これで一人前になるのだ。
昨今、再生可能エネルギー発電についての話を聞く機会が多い。改めて色々な説明を聞いたり読んだりするわけだが、太陽光や風力が発電する電気の質に関する話は、まず聞かない。だから、当然のようにして、質の悪い電気であっても、一人前の電気のようにして、無理とも言える様々な要求も出る。最も多い意見は、系統に連携するのが当たり前という考え方だ。”優先買取”と決められているのだからそうではあろう。しかし、現実は、連携される系統側に負担がかかり、負担が次第に大きくなって行くのだ。
“自立できない小さな木が大木に寄りかかる”のに似る系統連携
実は、系統に連携するというのは、あたかも自立できない小ぶりの木が、大木に寄りかかるのと似ている。寄りかかる木が小さく、少ない時には、問題は顕在化しない。しかし、小さくとも、次第に沢山になれば、何時の日か大木も傾いてしまう。
実際には、大木(系統電力)が傾かないように、そして、状況によっては、多くの小木が寄りかかることが出来るように、系統側(電力会社側)で様々な対応策を講ずるのである。
日本学術会議報告の指摘
ここで問題がある。
様々な対応策はタダではできない。対応策と言っても、現在から将来に掛けて多様な対策が必要となる。対応策とは、「瞬時瞬時変動する電気を安定化させる機能強化」、「容量に限度のある電線や変圧器(配電線や送電線など)の増強」、「電線の新設」、さらには、バックアップ電力の在り方などである。
今年六月に、日本学術会議が「再生可能エネルギーの利用拡大に向けて」と題する報告をまとめた。報告では、こうした課題についても触れられている。関係の部分を引用する。
「出力が変動する太陽光や風力の受入能力を高めるため、大型蓄電池を電力会社の変電所に設置する経済産業省主管の実証事業が開始された」と紹介している。次いで、「将来を見据えた系統強化(送電線網等電力供給に関わるネットワークシステムの増強)の費用を誰がどのように負担するのか、責任を持った系統運用をどのように行うのかも含めて検討すべきである」とある。
指摘の通りで、対応策を講ずるといっても、そのコストを誰が負担するのかというのが大問題なのだ。一般的な社会的雰囲気としては、特に太陽光や風力発電にかかわる人達は、そうした対策は、系統電力側(電力会社側)でやってくれるのが当たり前だとする意見が多い。電力会社も何となく、この点については触れたくないらしい。
流石に、学術会議の指摘する課題は的確だ。筆者からいえば、もう一歩突っ込んでもらいたかった。