誤解だらけのエネルギー・環境問題
再エネ全量固定価格買取制度の 回避可能費用をめぐる迷走
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
(「WEDGE Infinity」からの転載)
2011年、当時の菅首相が「自然エネルギーを国として全力を挙げて支援していく上で、大きな役割を期待したい」注1)と強く主張、第177国会において、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」は成立した。再生可能エネルギー全量固定価格買取制度がスタートして2年余りが経過し、認定済みの再エネ設備6900万kWが全て運転開始した時の賦課金が年間約1.9兆円、買取期間全体を考えれば約38兆円にもなるとの指摘がなされる注2)など、国民負担の大きさなどが徐々に話題となってきている。電力問題について精力的な発言を続ける自民党の河野太郎議員は、このテーマについても様々な発信を行っておられるが、どうもその論旨がすっきりしない。
この制度については経済産業省が既に見直しを行い、おおむね議員の主張した方向となっている。その意味で、この問題は決着済みとも言えるが、議論の過程で後味の悪い混乱があったので、ここで再度整理させていただきたい。
経産省と電力会社を批判
2013年11月6日付ブログ記事 「経産省によるボッタクリ」
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- 論旨イ:(再エネの固定価格買取制度の)回避可能費用が不当に安く設定されているために、年間1000億円以上が電力会社の懐に入っている。
2014年3月13日付ブログ記事 「ボッタクリをなくせ!」
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- 論旨ロ:消費者は、再エネ賦課金が下がった分、電力料金で負担しなければならないから、同じことだと言いたいのだろう。しかし、電力料金が自由化されれば、そうはいかない。回避可能費用が上がり、再エネ賦課金が下がったからといって、電力会社は電気料金を高くすることができるだろうか。例えばトヨタが、原価が上がったから当然に自動車の販売価格が上がります、というだろうか。モノの値段が市場価格で決まっているマーケットでは、原価が上昇したからといって、当然には価格は上がらない。電力会社は、まず、水膨れしたコストを削らなくてはならない。
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- 論旨ハ:回避可能費用が極端に安くなっているため、新電力は再生エネルギーを回避可能費用相当額で購入し、それをそのまま卸電力市場で売却してサヤを抜いて儲けるということができてしまう。
- 注1)
- 「菅内閣総理大臣記者会見(2011.5.18)」(首相官邸HP)
- 注2)
- 「再エネ6900万kWの負担は38兆円! 太陽光のFIT認定は一時的に停止を」電力中央研究所社会経済研究所主任研究員朝野賢司氏など
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