私的京都議定書始末記(その40)
-進まない非公式協議-
有馬 純
国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授
これは先進国を京都議定書に参加している附属書Ⅰ国と米国とに分断し、京都議定書に参加している附属書Ⅰ国については、AWG-KPのドキュメントに基づき、その中期目標を京都プロセスにアンカーしようという案に他ならない。日本にとって最も受け入れられない案だった。
日本は直ちに発言を求め、「コペンハーゲン合意で提出された先進国、途上国の緩和目標、緩和行動を一つの INF ドキュメントにまとめ、それをCOP決定、CMP決定両方でテークノートすべきだ。現在のような案ではCMP決定でテークノートされるAWG-KPのINF ドキュメントから日本を削除するしかない」と述べた。
他方、途上国からは「そもそも第二約束期間を設定することがカンクンの不可欠の成果である。先進国のこれまでのプレッジは野心のレベルが足りない。野心を引き上げない限り、途上国の緩和行動をテークノートすることは認められない」といった発言が相次いだ。このような原則論がまかり通っている間は、とても実質合意などできる状況ではない。
深夜12時からエスピノーザ議長主催の非公式コンサルテーションが再度開催され、各共同ファシリテーターからのレポートバックが行われたが、事態の進展はほとんどなかった。エスピノーザ議長は「9日朝9時に再度レポートバックを求めるので引き続き作業してほしい」と要請した。しかし京都議定書・アンカリングの共同ファシリテーターであるヒューン大臣は「今晩、これ以上作業しても進展は見込めない。明朝作業して昼までにレポートバックする」と発言した。こうして2週目の水曜日はほとんど進展のないままに明けることとなった。残された日数は2日間である。