今後電気料金が上がる3つの理由


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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再生可能エネルギー賦課金の増大

 菅直人元総理大臣が自身の退陣と引き換えに成立させた「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」により、2012年7月から再エネの全量固定価格買取制度(通称FIT)が導入された。この制度は、再エネ事業で利益が出るように環境を整えることで導入を促進し、また、普及に伴って段階的に買い取り価格を下げていくことでコストダウンを誘導することが可能であるとされている。
 例えば10kW以上の太陽光発電は、導入初年度の2012年度は42円/kWhで20年間買い取りとされたが、2013年度単価は37.8円(36円+税)/kWhに見直された。しかし買い取り単価は低減しても、消費者の負担は増大する。電力消費者が負担する買い取り費用総額は、買い取り単価と再エネによる発電量を掛け算した金額の合計だからだ。
 10kW以上の太陽光発電を例にすれば、「42円×その年に導入された設備が発電した電力量」が制度導入初年度の買い取り費用総額になる。これが翌年には「(42円×初年度に導入された設備が発電した電力量)+(37.8円×その年に導入された設備が発電した電力量)」となり、制度導入からの年月経過に伴ってこの層が積み重なっていくのだ。

 FITの構造からくる当然の帰結であり、導入から10年以上が経過したドイツでも、2014年の消費者負担は前年比18%増加となり平均的な家庭で年間2万3000円を超える。2月11日にドイツの連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)は世論調査の結果を公表した。脱原発、再エネの積極的導入といった政策の基本方針には9割近い支持があったものの、再エネによる電気代の高騰を危惧する声も7割に及んだ。増大し続ける賦課金への対応が政権の大きな課題となっている。
 特にわが国のFIT制度は制度設計の甘さが指摘されている。書類申請によって設備認定が受けられるため、非住宅用の太陽光については稼働開始した設備は認定された計画の2割程度にとどまっている。高い買い取り価格の権利だけ確保して設備費用の下落が進んでから施工・稼働することでより大きな利益確保を狙う事業者の存在も指摘され、経済産業省は土地や設備を確保していない太陽光発電事業者の認定取り消しに踏み切ることを明らかにしたが、そもそも諸外国と同様、適用買い取り単価は設備稼働時のものとする見直しを行うべきだ。
 また、買い取り価格の見直し時期を半年か1年ごととしているのも悠長に過ぎる。ドイツは2012年5月から10月は毎月自動的に1%ずつ切り下げ、11月からは新規設備の導入状況に基づいて引き下げ幅を決定するなど機動的な買取価格修正に苦心している。設備価格の連続的な低下をいかに適切に反映させるかがFITの運用上非常に重要である。
 再エネ普及策においては効率性の観点が軽視されがちであるが、国民負担が過大になれば普及策そのものの持続可能性が脅かされる。再エネの普及策見直しが急がれる。