系統接続がオプションに


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 これは、電力事業者が顧客を大きく失うことを意味する。これまで、電力販売量を増やして売上げを伸ばすことで事業コストを回収するというビジネスモデルに頼ってきた伝統的な電力事業者にとっても、その事業を規制する州当局にとっても、全く想定外のこととなる。顧客数が減り、売上げが減るのだから、従来型の方策であれば料金値上げしか方策がないが、値上げはさらに顧客数を減らす要因となるし、太陽光発電と蓄電池を持たないユーザーがその値上げに対して大きな不満を持つことにもなる。
 この事態が起こりうることに対して、危機だと考える電力事業者があるのは当然だが、これを新しいビジネスモデル開発の契機にして、現在の電力供給システムに新しい価値を付加することが必要となると説く。各州の規制当局者にとっては、全く新しい課題を突きつけられたことになり、これまでの延長ではない新しい規制が準備されなくてはならない。これまで電力供給を支えてきた集中型大規模発電設備は,大体30年の稼動を想定しているが、2030年頃に顧客を大きく失う従来型電力事業者にとって、設備計画の基盤が変化することを意味するとしている。
 系統への信頼度が低い米国だからこの想定があてはまるという考え方もあるだろう。しかし、現在電力供給力の不足に直面している日本でも、自前の電源を保有しようとする消費者が増えていることは確かだ。展示会などを見ると、太陽光発電設備価格の低下を実感するし、家庭用、業務用の蓄電池が商品化されている。そして、日本社会全体が持つようになった電力供給への不安は、長期に亘って残るだろうから、分散型電源へのシフトが進むことは確実だろう。当面は系統電力消費の削減が歓迎されているとはいえ、これが今後も大きく進むとすれば、米国と同様に系統からの離脱も含めた電力事業の顧客離れが増える可能性はある。電力市場の完全自由化を始めとする大変化が起きようとしている日本で、系統から離脱するユーザーも念頭に置いた制度準備が行われるだろうか。

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