温暖化よりも怖いのはエネルギー資源の枯渇だ
久保田 宏
東京工業大学名誉教授
地球にとって怖いのは温暖化よりエネルギー資源の枯渇である
IPCC は、21世紀末までの累積CO2排出量の最大値を7 兆トンとしているが、実際に地球大気中に排出され得るCO2の量は、地球上の化石燃料資源の確認可採埋蔵量の値によって制約されるので、せいぜい4兆トン程度に止まる(文献7)。このCO2排出量の制約から、たとえCO2起源の温暖化が進行するとしても、地球気温上昇は2 ℃程度に止まると推算され、上記した杉山(文献1)が「われわれはつきあいながら生きていける」としている気温上昇幅の限界値3 ℃程度を下回る。
もちろん、この確認可採埋蔵量の値は、現状の世界の科学技術と経済条件の下での値である。もし、人類が、現状の経済発展をそのまま続けるためとして、際限なく化石燃料を消費すれば、CO2の排出量が温暖化の脅威を引き起こすような値に達するかもしれない。しかし、その前に、化石燃料の価格が高騰して、使用したくても使用できなくなる。すなわち、化石燃料の大量消費の継続は、CO2の排出に起因する温暖化をもたらす前に、その枯渇により経済的理由から現代文明社会は大きく衰退するだろう。その前に、資源の争奪のための戦争が起こることも否定できない。すなわち、現代文明社会にとっての本当の恐怖は、実際に起こりえないCO2起源の地球温暖化ではなく、化石燃料の枯渇である。その時に、真っ先に沈没するのが、先進国のなかでもエネルギー資源を持たない日本であろう。
日本は、いま、この来たるべきエネルギー資源の枯渇の恐怖に備えなければならない。そのためには、先ず、現在、国民の経済的負担のもとに進められている政治主導の地球温暖化対策の一切を速やかに中止することが求められる。この地球温暖化対策費の支出を止めることは、いま貿易赤字に苦しむと日本経済の再生にも大きく貢献するはずである。
- <引用文献>
- 1.
- 杉山大志:環境史から学ぶ地球温暖化、エネルギーフォーラム新書、2012 年
- 2.
- 気象庁暫定訳:IPCC第5次評価報告書 気候変動2013、自然科学的根拠、政策決定者向け要約(2013年10月17日版)
- 3.
- 赤祖父俊一:正しく知る地球温暖化、誤った地球温暖化論に惑わされないために、誠分堂新光社、2008 年
- 4.
- Abe A. et. Al : Isolation-driven 100,000 year glacial cycle and hysteresis of ice-sheet volume, Natur, Vol. 500, No, 7461( 2013/8/3)
- 5.
- 久保田宏:IPCC 第5次評価報告書批判-「科学的根拠を疑う」(その2)地球温暖化のCO2原因説に科学的根拠を見出すことはできない、ieei 2014/1/21
- 6.
- Nakamura M.:Journal of Climate, Vol. 26 , Issue 21 (November 2013)
- 7.
- 久保田宏:IPCC第5次評価報告書批判-「科学的根拠を疑う」(その1)地球上に住む人類にとっての脅威は、温暖化ではなく、化石燃料の枯渇である、ieei 2014/1/15