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化石燃料輸入削減への努力


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 原子力発電所の稼動が全面停止したことによって、それに代替する発電が全て石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料で行われたため、その全量を輸入に依存する日本の国際収支が悪化する大きな要因となっている。エネルギー自給率が極めて低い日本としては不可避なことではあるが、仕方がないではなく、小さな削減量の積み重ねを続けることによって化石燃料の輸入量を少しでも減らす努力をしなければなるまい。
 まず発電の本元である発電所について、発電効率を大きく引き上げるために、天然ガスコンバインドサイクル設備を新増設するという方策がある。既に一部の電力会社では実施されているが、発電効率の低い石油火力をこれに置き換えることを推進すると同時に、コンバインドサイクル設備の新設については、環境アセスメントに要する期間を可能な限り短縮するなどの政策的対応が必要となろう。
 これと並行して推進される必要があるのは、電力だけでなく熱も含めたエネルギーの消費を削減することである。いま、スマートコミュニティー、スマートハウス、スマートビルなどの実証プロジェクトが各地で行われ、30%というほど大きくエネルギー消費を引き下げることができたという結果も報告されている。ハウスメーカーが商品として出して売れ始めている電力自給率が非常に高い住宅も注目できるものである。このような新しいプロジェクトで開発された手法や技術を既存の住宅、建物に応用して、エネルギー効率を上げることが重要である。その際には、建物本体に加えて、既設のポンプ、モーター、配管、などの損失を精査して効率の高いものに取り換えることによって大きな効果をあげることもできる。総合的な設備改修対応策を周知させ、それに必要な投資には短期間で回収できるものも多いことを具体的に認識させることが重要だろう。エネルギー消費削減効果が出るまでの時間は短い。実現される個別の削減量は少ないだろうが,それが全国的に実施された場合の累積効果は大きくなるはずだ。
 さらに、上記二つの施策の中間的なものとして上げられるのが、需要地に設置されるコージェネレーションのさらなる普及促進である。2013年3月末時点でコージェネレーションの累積設置規模は、産業用、民生用を合わせて1,000万キロワット近くある。毎年度単位の設置規模の推移を見ると、燃料価格の高騰のために2010年度までは低落の一途を辿り、年間10万キロワットほどになっていた。ところが2011年度から上向きに転じ、2012年度には年間40万キロワットが設置されている。2013年度もこの拡大基調は継続されているようだから、中規模の発電所が毎年一基新設されるのと同じ効果が生まれることになる。コージェネは廃熱を効果的に利用すれば、総合エネルギー効率は80%ほどになるから、発電量の伸びに対応する化石燃料の消費を抑制する効果が大きい。
 具体的な事例として、つい最近横浜市が出した予算に示された内容を紹介したい。横浜市立大学付属市民総合医療センターは726床規模の病院だが、千キロワットのガスタービン発電機を3基設置していたものに、300キロワットのガスコージェネを新たに2基設置して、近くに新設される横浜市南総合庁舎にも電力を供給するという事案が予算化されている。熱利用としては廃熱ボイラー、蒸気吸収式冷凍機などが装備されていて、十分な熱回収が行われているはずだ。病院は24時間稼動だから、その高いエネルギー効率のメリットは大きい。病院だけでなく、ホテルなどの改修、新設がなされる時の参考になるだろう。稼動時間が長く、熱消費が大きい建物や工場設備に、適正規模のコージェネ導入を優先的に促進するような指針が出されても良いのではないか。
 原発の稼動が再開されたとしても、エネルギー消費高効率化の重要性は全く変わらないのだから、これまで以上にきめ細かい総合的な推奨策が求められる。

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