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消費税と再生可能エネルギーへの賛否があぶり出す無責任な政党


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授


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 消費税を引き上げるかどうかの報道が連日のようになされている。消費税が3%上がれば生活が苦しくなるとの理由で引き上げに反対する意見もある。不思議なのは、生活が苦しくなるとして消費税引き上げに反対する団体、政党の多くが再生可能エネルギー(再エネ)推進に賛成していることだ。日本共産党は「消費税増税は暮らしも経済も破壊する」としながら、「即時原発ゼロ、再エネの大量導入」を政策の一つに掲げている。再エネの大量導入は当然電気料金の大きな値上がりにつながり、暮らしと経済に大きな影響を与える。
 日本共産党はなぜ電気料金の大幅値上げにつながる再エネの大量導入には賛成し、消費税の引き上げには反対するのだろうか。ひょっとすると、再エネの大量導入を主張する政党、団体には、不安定な発電源の再エネでは安定的な原子力の代替にはならないこと、また再エネ導入により電気料金は大きく上昇するという基本が分かっていない人が多いのかもしれない。
 再エネの導入が続いた欧州主要国の電気料金がどうなったのかを調べれば、影響の度合いは簡単に分かる。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン・プリンストン大学教授は、規制緩和に関し「日本は追従者としての利点がある。あらゆることを一から実験する必要はないという恵まれた立場にある」と発言している。これは他の制度についても同じだ。日本共産党の人はこの言葉を知っているのだろうか。
 風力、太陽光などの再エネを導入し、発電量の大きな部分を賄っている国の代表はデンマークだろう。風力発電で発電量の20%以上を賄っている。デンマークに次ぐ国は風力で約8%、太陽光で約5%を賄っているドイツだろう。この両国の家庭用電気料金は、再エネの導入に連れて大きく上昇した。今欧州連合28カ国の中で家庭用電気料金が最も高い国はデンマークだ。1ユーロ130円で計算すると、1kWh当たり39円だ。ドイツの料金もこの10年で2倍以上になり今35円している。欧州の家庭用電気料金が高い上位10カ国の料金を図に示している。10位のオーストリアでも26円を超え、日本の平均的な料金を上回っている。
 電気料金上昇のかなりの部分は再エネ導入が招いたものだ。ドイツの家庭の再エネ買い取りの負担額は1kWh当たり約7円にもなっている。ドイツでも、買い取り負担額が高すぎるという人が半分を超えるようになった。政府は買い取り額の引き下げに躍起になっている。最近の太陽光発電設備からの買い取り額は家庭用設備からが1kWh当たり20円弱、事業用の設備が14円弱、それぞれ日本の買い取り額の約2分の1と3分の1だ。それでも今までの設備の累積もあり7円の負担だ。ドイツ政府は5月から家庭用蓄電池に補助金を出すことを決めた。固定価格買い取り制度を使用せずに蓄電して自宅での使用を奨励することしたのだ。
 英国は新たに来年から固定価格買い取り制度を開始することになったが、対象となる太陽光発電事業は5000kW以上の規模の設備だけだ。買い取り価格は1kWh当たり19円と日本の約半分だ。ドイツも英国も買い取り数量と支払総額を抑えるための政策を考えている。電気料金のこれ以上の上昇を防ぐためだ。再エネの導入は産業振興、雇用にも結びつかず世界の太陽光パネルの製造拠点になった中国だけ雇用増を実現したことも、欧州諸国が政策変更を行っている大きな理由の一つだ。
 事業者に極めて有利な買い取り額を設定している日本では、今のドイツに設置されている太陽光発電設備量に近い量の設備設置の申請が既に認可されている。設備が全て設置されれば、電気料金の大幅値上げは避けられない。日本共産党はそれもきちんと計算したうえで、再エネの大量導入を主張しているのだろうか。家計も経済も大きな影響を受けることをどう説明するのだろうか。
 消費税反対、即時原発ゼロ、再エネ大量導入を唱える背景には、電力会社などの大企業は悪いことをしているに違いないという思いもあるのだろう。しかし、大企業もそこで働いている人間が支えている。企業の意思決定も多くの働く人が行っているものだ。データを分析しない根拠のない思い込みに基づく主張は世の中に受け入れられるのだろうか。



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