需要側のスマート化で計画停電を防げるか
電力改革研究会
Policy study group for electric power industry reform
3.デマンドレスポンスの課題
前述の通り、系統運用者がリアルタイム市場で発電所に出力増加の指令を出すのと同じように、需要側に使用抑制の指令を出せるようになれば、計画停電は不要になるだろう。しかしその実現にあたっては、主に2つの課題があると考えられる。
最初の課題は、系統運用者から需要をどのようにリアルタイムに調整するのかという技術的課題だ。例えば火力発電所と同程度の調整速度で調整するのであれば、系統運用者が需要抑制を指令してから数分~数十分の間に需要が抑制できなければならないから、当然、需要家への電話連絡などでは無理であり、ICTを活用した自動的な需要調整(いわゆるAutomated Demand Response: ADR)が必要となるだろう。
図3には将来のADRの枠組みのイメージを示した。需要家側にはHEMSやBEMSなどの何らかのエネルギー管理システム(xEMS)が導入され、xEMSに対して系統運用者からの需要抑制指令が届くとxEMSが需要家機器の電力使用の抑制を行うことが想定されている。図3に示したように、系統運用者(送配電会社)からのDR信号は、小売り会社やアグリゲータを経由してインターネットなどの公衆網で送られることもあれば、送配電会社が有するスマートメーターの通信インフラを使って送られることも考えられる。
これらの通信ルートを使ってリアルタイムでの需要調整を行う場合、それぞれの情報ルートにおいて、どの程度のリアルタイム性が確保できるか、また通信ネットワークが必要なセキュリティレベルが確保できるのかが課題になってくると考えられる。
もう一つの課題は、リアルタイムで調整可能な需要の量には上限があると考えられることだ。図4に示したようにその量が限定的ならば、需給ギャップの大きさ次第によっては運転予備力が確保できないことになる。
こういった場合、リアルタイムでの需要調整ではなく、一日前など事前に通告があれば、需要側の予見性が高まることから、より少ないコストで需要を調整できる余地が拡大する。したがって前日段階で翌日の需給逼迫が予想される場合には、前日から当日にかけて事前の需要調整(スローなデマンドレスポンス)を行って需要を抑制することで、必要な運転予備力を確保することが考えられる。ただし、前日段階では需要想定の誤差が大きくなるため、安全をみて実際よりも余分な需要抑制が必要になるだろう。
また、前日段階でのデマンドレスポンスを通告するのであれば、図3に示した通信ルートは、比較的ゆっくりしたものでよくなると考えられる。