望ましい電力供給構造


Policy study group for electric power industry reform

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3.現実の供給構造との差異

 エネルギーバランスから見た供給構造に、地球環境対策からのCO2削減目標と設備面から見た経済性や制約要因を考慮し調整することにより、現実的な電力供給構造の将来目標を策定することになるが、特に開発の制約要因は、望ましい電力供給構造の実現性の面で十分考慮する必要がある。具体的には、電源の立地問題や各種規制等が挙げられる。
 電源の立地制約については、かつては公害問題を背景に火力発電所の建設が困難化する事態があり、その後は安全性の問題を背景に原子力の立地が困難化していることから、計画通りの開発が困難化しており修正を余儀なくされている。電源の立地対策については、従来政府も事業者と一体となって支援措置を講ずる等、望ましい供給構造の実現に向けた努力を図ってきた。
 電源の開発を阻害する規制上の要因としては、例えば水力発電所の建設に必要な水利権の問題、環境負荷物質の総量規制や国立公園内において地熱開発が制約される等環境面の制約問題等がある。また、船舶交通が輻輳する瀬戸内海地域において、かつてLNG船の規制によりLNG火力の建設が制約されたような場合も、規制上の制約要因に当たる。

(おわりに)

 各電力会社管内の固有の制約要因もあり、電力供給構造は電力会社によって異なるが、政府と事業者の相互協力による継続的努力の結果、わが国全体としての電力供給構造は、石油危機当時に比べ改善が大きく進んだ。
 今後は新たな情勢変化を踏まえ、今日的な修正を加えることにより、将来に亘り望ましい電力供給構造が構築されることを期待する。他方、現在政府において電力システム改革の議論が進んでいるが、英国や独国において既に問題が顕在化しているように、競争市場においては、長期的視点に立ち計画的に電力供給構造を構築することは困難であることから、エネルギー資源に乏しいわが国がこれまで築いてきた電力供給構造が歪められ、将来の3Eの実現に支障が生じる懸念がある。今後、このような支障が生じないよう、十分な検討が行われることを併せて期待するものである。

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