望ましい電力供給構造


Policy study group for electric power industry reform

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 わが国の将来のあるべきエネルギー供給構造をエネルギー基本計画において検討する際には、各エネルギーの供給確率Pを評価することが重要である。Pを評価する際には、当該資源の総埋蔵量(水力等自然エネルギーの場合には国内賦存量)、資源の分布状況及び地政学的リスク、備蓄の状況、技術開発による課題克服の可能性等を総合的に勘案する必要がある。更に、万一他のエネルギーの供給に支障が生じる際に、その支障分を補完しうる供給のフレキシビリティも加味しておくことが重要である。例えば石油については、将来も含めた高い中東依存度と国際的な備蓄スキームの有効性評価、他のエネルギー源の供給支障が生じた際にスポット市場から調達できるフレキシビリティを評価することとなる。他方でLNGは、石油より供給国が多様化している一方、備蓄の困難性や国際的なスポット市場がまだ不十分な点を評価することとなる。またシェールガス革命は、リスク低下要因となりうるが、環境問題で将来採掘が制限されるリスク等も考慮する必要がある。石炭については、現在の主要供給国である豪州の政情は安定しているが、集中豪雨等により一時的に供給不安が生じたことも踏まえ、供給国多様化の可能性、埋蔵量の約半分を占める低品位炭の利用拡大が図られる技術(IGCC等)の開発の見通しも評価する必要がある。原子力については、従来ウラン供給源の多様性や一度燃料を装荷すると3年運転できる備蓄効果等も考慮しリスクを低く評価していたが、福島の事故を踏まえ評価を見直す必要がある。

 なお、現実問題として、変動する将来の各P値を絶対値として求めることは困難であることから、相対的な評価を行い、導入エネルギー量の比率(%)にはある程度の幅を考えておくことが適当と考える。

 エネルギー供給構造を考える際に対応すべき課題として、地球環境問題(CO2の削減)がある。電力量の供給構造についても、この点の制約を考慮(セキュリティ面から見た望ましい供給構造を一部修正)する必要がある。国内におけるCO2の削減目標如何によるが、化石エネルギー電源から排出されるCO2の総量に目標を設け、その範囲に留まるよう供給電力量の比率を修正することになる。ただしCO2の削減については、需要面からの省エネ対策や、わが国の優れた技術を海外展開することよってより効率的にCO2を削減できることも念頭に置く必要がある。したがって、望ましい電力供給構造の検討に当たっては、まず安定供給の視点を主眼に置き、国内におけるCO2の削減目標は、合理的に達成可能な範囲にとどめることが適切である。

 次に供給コストをできる限り低減する課題に応える必要があるが、この点については、発電設備によって固定費と燃料費の構成が異なることから、発電設備の構成を考える際に反映する。

2.発電設備量から見た供給構造

 電力の供給においては、発電と消費が同時に行われる(備蓄が困難)ことから、瞬時において両者をマッチングさせることが必要であり、停電を回避するためには、最大電力発生時において安定した供給が行われるための設備容量を保有することが必要である。発電設備としてどの電源をどの程度保有すべきかについては、必要な時に必要な量の発電ができる能力(供給力)としての評価(例えば風力発電のように自然条件で左右される不安定電源は供給力としての価値はゼロ)や、発電設備の運用特性(負荷調整能力)を考慮した上で、電源ごとの固定費と可変費(燃料費)から見た経済性が最大になるよう計画する。具体的には、将来における電力需要のデュアレーションカーブを想定し、次のとおり、全電源のDC+ECの和が最小となる最適解を求める。この結果、例えば仮にエネルギー供給量の観点から見たバランスではガスによる電力量が25%、原子力が25%と同じであった場合でも、設備量(kW)としてはガス火力を原子力よりも多く保有する(例えば30:20)ことが適切であるという解が得られる。
 なお、供給リスクへの対応力を設備面から高める方法としては、火力発電のデュアルバーナー化(同一の発電設備で複数種の燃料を焚けるようにする)を進めることもあるが、とりあえずこのようなケースは省略する。

【目的関数】
     Σ(DCx+ECx)→ Min
       X :各電源(n,c,g,・・・)
       DCx:固定費(資本費,運転維持費)
       ECx:可変費(燃料費)

(注)
簡略のため上記式で示しているが、実際に計算する際には、ある期間(例:15年間)の値を現在価値に換算して合計することとなる。
【制約条件】
 
長期の需要見通し(伸び率,負荷率)とそれに対する供給予備力の確保
各ユニット特性(最大/最低出力、燃料種別、年間補修日数、発電機の建設単価、熱効率、負荷追従率等)
燃料価格変動、為替変動