排水環境の負荷を減らし、そのままでは廃棄物になるものをバイオマス発電燃料に変える“エコリカバ―II”
環境技術事例&インタビュー
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
エコリカバ―II開発秘話
――エコリカバーIIは何でできているのですか?
国島:もともとはパルプ原料です。企業秘密の部分もありますが、ただの繊維ではありません。ある日本の製紙会社が持っている技術で、ボードになっているものを真綿状にしました。真綿の形にすることにより、油分を吸い込みやすくしています。こうすることで表面積が非常に大きくなります。親油性、いわゆるワックスのようなものを含有しており、排水の中に入れると水ははじきます。撥水ですから、逆に親油性があるので油を吸着しやすいわけです。非常に細かい繊維ですから、油をその中に閉じ込めて吸着します。そして、どんどん集まってくる凝集の効果が出ます。臭いが減るのも、そういう繊維と繊維の間、もしくはそういう細かい繊維の中に悪臭の成分が取り込まれるので、取り上げた後も臭いがなくなるのだと思います。
製品中の白い粉は、排水中の微生物を活性化し、生物処理の効率を上げる役割の栄養剤のようなものです。それと併せて、排水には油分が水に溶け込んでいる乳化したものもあるので、それを取るために凝集剤が入っています。凝集剤はフロックという柔らかい豆腐のようなものを構成し、それがこの繊維に付着してくるので、表面だけでなく排水中に入っている固形物の油も効率よく取ってくれます。粉と繊維というのはなかなか一体にならないので、さらに水溶性のパルプと組み合わせました。
――これまでにはない技術なのでしょうか?
国島:それぞれの物はありました。凝集剤もありましたし、例えば、高速道路にガソリンがこぼれてしまったときに繊維に吸収させるような物はありました。こうしたものを合わせ、さらにオリジン東秀のお店の排水に合わせた調合などをしながら、この組み合わせを作っていきました。排水に含まれ、流出するであろう油脂の濃度があります。それは水質基準法で決められた目標となる濃度です。それを達成するための配合に調整し、繊維の量などを決めています。
――代表の細川さんにお聞きしますが、商品開発された背景は何ですか?
細川:この白い粉の中に10数種類いろんなものが入っていて、これを水に溶かしたものは特許品(エコリカバ―)で、ある個人が発明してから10年以上経っています。大きな下水処理場などでは、その原液を使用し浄水処理に使っています。バクテリアを活性化して、バクテリアが汚物を効率的に処理するというシステムは以前から持っており、それは弊社の主力商品として今日まできています。
2、3年前になりますが、このパルプの技術を持っている製紙会社があり、経緯としては弊社に「こういうおもしろいものがある」と教えてくれた人がいました。パルプとエコリカバ―の粉との組み合わせが、油脂などの分解と分離回収により大きな浄水効果を表すということは、実は最初はよくわかっていませんでした。しかし、これに関心をお持ちになり、実験的に使ってみようと現場を提供してくださったのがオリジン東秀でした。白い粉は本来水溶液になっているものですが、水溶液にする前のもとの粉を繊維と組み合わせています。
――産業廃棄物か有価物かの違いは大きいですね。
細川:それについては画期的な違いを作ったと言えるでしょう。昨年6月、エコリカバ―IIのグリーストラップ汚泥を、経済産業省が「産廃ではなくバイオ燃料として扱う」と区分しました。従来通りに処理すると“産業廃棄物”ですが、少し手を加えると“バイオ燃料”であり“有価物”になるというわけです。わずかこんなことなのですが、いわば原料があると思っていただければ良いでしょう。その原料が廃棄物として捨てられるか、原料を燃料として回収するか、そこが分かれ目になっています。
――小さい製品ですが、大きな変革をもたらす可能性を秘めていますね。
細川:エコリカバ―II 100gを排水に入れると、それが油を吸い取り100gが1kgになります。この1kgは、重油の800gに相当する熱量を持っています。全国の住宅でエコリカバ―IIで排水処理すると仮定すると、一年間に家庭の電気を何万戸分賄えると思いますか?実は、150万戸分の住宅の電力はこれで賄えると推定されます。
――現在は、回収物はバイオマス発電所の燃料として利用されているのですか?
細川:回収物を収集しバイオマス発電所に受け取ってもらう仕組みです。太平洋セメントにバイオマス発電所(埼玉県日高市)があります。まず、このケースから始まっています。バイオマス発電所で発電、その折に発生する炭酸ガスはカーボンニュートラルで温室効果ガス排出量としてカウントされません。