第9回 日本化学工業協会 技術委員会 委員長/三井化学株式会社 取締役 常務執行役員 生産・技術本部長 竹本元氏

環境問題のソリューション・プロバイダーとしての化学の使命


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――さまざまな技術と工夫で省エネがさらに向上したわけですね。

竹本:そうですね。我々一つの企業で実際にエネルギーを削減していくことは、昭和48年の一次オイルショック以降相当注力してきていますが、一企業でやっていくにはそろそろ限界が見えてきています。近年はコンビナートに隣接する業種を超えた他社工場と連携しながらエネルギーをセーブしていく取り組みが重要になってきています。

 例えば他の企業で余った熱や物質が、我々にとって有用であれば連携するという仕組みです。市原地区のコンビナートでは隣接の石油精製を含めた3つの企業で連携し、化石資源の消費効率を上げています。また石油精製会社と連携して、共同使用設備を設置することにより、原油処理の効率向上を行っています。市原地区では、電力会社とコージェネレーションで発電と蒸気を発生する設備をつくり、エネルギー効率を上げていくという地域連携をやっています。

――地域連携がキーワードですね。

竹本:そうです。大阪のコンビナートにある私どものエチレンプラントのプロセスではかなりの冷熱が必要になります。一方、近隣のガス会社では、天然ガスを蒸発させて民生用にガス化するために冷熱が発生します。その冷熱は海水で海に逃がしていたのですが、それを私どもに供給してもらい、両者WIN・WINの関係でやることにしました。これにより原油換算で、1万3千kℓほど年間セーブできます。この取り組みは、省エネルギーセンター主催、経済産業省後援の平成23年度「省エネ大賞」表彰において「経済産業大臣賞」をガス会社と共同で頂き、私も表彰していただきました。今後もこうした地域連携は重要です。

――三井化学は再生可能エネルギー分野では、どのような開発をされていますか?

竹本:再生可能エネルギーは、未だ高コストという問題があり、低コスト化と量産についての技術開発が必要です。この技術開発の中核技術は化学が担うものと考えています。三井化学は、太陽電池の封止シート「ソーラーエバ」、太陽電池用の接着剤、また風力発電機に用いる潤滑油添加剤「ルーカント」等の製品を供給しています。

 本年、三井化学は太陽光・風力発電に技術と実績を持つ7社の共同で国内最大級のメガソーラー及び風力発電事業を行うことを決めました。発電能力は太陽光50MW、風力6MWで、約80万平米の敷地規模になります。技術情報を7社で共有し、再生可能エネルギーの技術課題に取り組み再生可能エネルギーの開発を促進していきたいと考えています。

――化学製品が技術革新の要ですね。

竹本:再生可能エネルギー分野において、太陽光の発電効率を上げる、また風力をどう活かしていくかについては、化学の素材の果たすべき役割は非常に大きいと思います。