COP18の概要~産業界の視点(第3回)


国際環境経済研究所主席研究員、JFEスチール 専門主監(地球環境)

印刷用ページ

 ダイアローグは4つのセッションに分かれて進められた。最初のセッションは資金協力で、電気事業連合の前田部長の司会の下、国連地球環境ファシリティ(GEF)の石井菜穂子CEO、韓国環境省のYeon Chul Yoo局長、国際排出権取引協会(IETA)のForrister CEOが議論をリードし、民間資金導入の必要性、期待と課題について議論が行われた。
 第2セッションは技術メカニズムで、ビジネス・ニュージーランドのCarnegieエネルギー環境部長が司会、環境省の島田参与(国連技術理事会=TEC理事)、ウガンダのGwage交渉官、国際電力パートナーシップのKyte博士がリードスピーカーとなり、TECやCTCNといった国連の技術メカニズム関連組織に民間ビジネスの知見を打ち込んでいくことの重要性、仕組みなどについて話し合った。
 第3セッションは適応問題で、経団連の立場で筆者が司会を務め、IPCCのYpersele副議長、フランス電力公社のCarneilマネージャー、国際鉱業金属業評議会(ICMM)のDrexhage理事、オーストリア政府代表で国連適応委員会のRadunski氏が登壇し、激甚災害への対応や伝染病に対して国際ビジネスも現実問題として対処を余儀なくされており、具体的な対策やノウハウを蓄積していること、今後はその個々具体的なケースやノウハウをパブリック・プライベート・パートナーシップを通じ、官民で共有化していくことが必要とのメッセージを打ち出した。
 第4セッションは国連プロセスへのビジネスの関与(engagement)強化を巡り、USCIBのKennedy副代表の司会の下、EUのDebleke気候変動局長、METI鈴木環境技術産業局長、ドイツ産業協会(BDI)のLoesche理事が登壇、国連の各専門機関に、専門的な知見を持つ産業界の代表がオブザーバーとして参画することの重要性、国連へのビジネス界の代表は影響力のある特定の個人が就くのではなく、ビジネス界自身が適切な人材を推挙する自己選択プロセスが重要との見解で一致した。
 最後にBizMEFを代表してBrian Flennery BizMEF Business Engamenent TF委員長が、こうした官民対話の重要性につき再確認し、2015年に向けてこうした官民対話ラウンドテーブルを毎年開催していくことの重要性に言及、特に来年のポーランドで引き続き対話を続けることを確認して閉会した。
 COPのイベントの多くが、招聘大物スピーカーが言いたいことだけ言って帰る形の一方通行の講演会形式になりがちなのに対し、今回のダイアローグでは、それぞれパネリストになりうる官民の代表がラウンドテーブルに座り、ほとんど3時間半にわたって席を立つことなく議論に参加することで、「知見や意見の交換」を行うことができたという意味で、意義のある会合だった。終了後、参加した日、米政府関係者、メキシコ、ニュージーランドの政府代表から、主催者に「大変有意義だった」との声が寄せられ、また閉会後も多くの参加者が引き続きネットワーキングや対話を続けて、なかなか帰ろうとしなかったことから、新しい試みとしては一定の成功を納めたと評価してよいだろう。後日もたれたBizMEFの反省会では、今後ワルシャワでのCOP19でも引き続き同様のイベントを開催するということで、BizMEF参画団体の間で合意がなされた。