第7回 日本自動車工業会 環境委員会運輸政策対応WG主査/トヨタ自動車株式会社 環境部担当部長 大野栄嗣氏
世界の自動車メーカーが燃費向上の競争、技術の戦国時代にある
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
――資源的な問題はいかがですか?
大野:電気系を使っていますから、レアアースやレアメタルなどの利用はどちらかというと多いので、問題はあります。いろいろな方策を練っていて、例えば日本政府と一緒に資源を確保する計画や、リサイクルして消費を減らす取り組みも始めています。また、設計的にあまりレアアースやレアメタルを使わないでいいようなモーターやバッテリーの開発など、多方面で対策は打っています。だから何とかなるとは思っていますが、資源問題は重要な開発要素のひとつですね。
――次世代自動車が普及すれば、運輸部門のエネルギー消費やCO2排出はかなり削減できますか?
大野:運輸部門のCO2は、日本の場合2000年頃から急激に減り始めています。私たちが燃費を向上させていることが貢献していると思います。しかし、車の燃費の向上と次世代車の数を増やすなどの車側の対策だけでは、やはり足りません。例えば交通システムで渋滞をなくす、あるいはエコドライブをすることも大事です。
将来の道路交通はどう変わっていくのか
――将来的に道路交通はどのように変わってゆくのでしょうか?
大野:これから日本は人口が減り、しかも高齢化が進みます。このような社会現象にうまく適応した道路交通が求められますね。
モーダルシフト、過度にあまり車を使わないようにしようという取り組みも出てきていますが、将来マイカーがなくなるとは考えられないですね。要は、個々の都市や地域に合った交通機関を選択することが重要です。つまり最近流行の言葉で言えば、ベストミックスです。
もっと本質的な話をすれば、まちづくりから議論しないといけません。人口減少への対応策としてコンパクトシティーが好ましいという意見もありますが、日本のようにすでに街ができてしまっている国では、街を一から作り直すのも大変です。
例えば、小さな電気自動車だったら排気ガスを一切出さないわけですから、ショッピングモールの中に乗り入れても構わないでしょう。将来は、こういう「超小型モビリティー」と呼ばれる軽自動車よりもさらに小型軽量のクルマも、新しい交通システムにお役に立てるものと思います。そういった従来の常識にとらわれないまちづくりの工夫が大切ですね。
【インタビュー後記】
自動車業界の燃費向上への努力、また次世代自動車戦略からモビリティーの視点からのまちづくりまで、ワクワクと想像を膨らませながらお話を伺いました。次世代自動車もこれから新しいタイプも市場に出てくるそうですから、ユーザーの私たちもどれが自分の生活や考え方にマッチしているのか、選択する幅がぐっと広がりそうです。10年、20年というスパンで考えると、モビリティーと私たちの生活の関わりはさらに密接に、楽しく発展していきそうです。