第5回(後編)日本製紙連合会 技術環境部 専任調査役 池田直樹氏/株式会社日本製紙グループ本社 技術研究開発本部 エネルギー事業部長 野村治陽氏

製紙業界の循環型社会と創エネへの貢献。電力自由化に向けた動きも加速


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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 今回も引き続き、日本製紙連合会技術環境部専任調査役の池田直樹氏と株式会社日本製紙グループ本社技術研究開発本部エネルギー事業部長の野村治陽氏のおふたりに、鼎談の形で製紙業界のエネルギー戦略についてお話を聞きました。これまでの製紙業界の事業のあり方が転換期を迎えています。時代の変化を前向きに捉え、電力自由化の流れにも業界としての積極的な姿勢が伺えます。

電力改革は「30分同時同量」などの制約などを見直して進めるべき

  池田直樹(いけだ・なおき)氏。1969年王子製紙(旧東洋パルプ)入社、広島県呉工場勤務同工場 電気課長、施設部長兼王子エンジニアリング呉事業部長。2006年王子本社勤務、大口自家発電施設者懇話会理事長などを経て2008年以降、日本製紙連合会 技術環境部専任調査役。
野村治陽氏(のむら・はるひ)氏。1978年 十條製紙入社 宮城県石巻工場勤務。以降 八代、釧路、勿来、本社、インドネシア(出向)、岩国、白老で勤務。2005年 日本製紙岩国工場動力部長。2011年 日本製紙グループ本社エネルギー事業推進室長。
2012年~日本製紙グループ本社エネルギー事業部長。

――電力改革について製紙業界としての考えをお聞かせいただけますか?

池田直樹氏(以下敬称略):今年の2月、総合資源エネルギー調査会総合部会の電力システム改革専門委員会において日本製紙連合会エネルギー委員会の当時の林昌幸委員長が、意見を述べる機会がありました。

 基本的に供給力の増大と需要の抑制を同時に考えられるような制度にしないといけません。3.11以後の原子力発電の再稼働問題、また電気料金の問題もあります。再生可能エネルギーを増やすことも電力価格に反映されますので、両方の制度をうまく活用できるようにしなければ、将来にわたって安定した電気供給と、安い価格での供給はできないと懸念しています。

 需給によって価格が動くため、インセンティブを付けることも必要でしょう。また需要者の利便性も考えないといけない。供給力の有効活用拡大する上でネックになっているのが、電力会社間の系統連系の容量の増強です。50ヘルツと60ヘルツの間で電力の融通が100万kW程度しかできないような状態のままでは、再生可能エネルギーを増やし、地域に偏在する電気をうまく集めてこようとしても、送電網が細いから電気が融通できないというのでは話になりません。

 さらに「みなし節電」や「自己託送」もそうですが、我々が余剰電力を送り出す際に、障害となるのが「30分同時同量」という制約です。需給の変動に合わせて30分間きちんと同時同量の電力を出さないとダメだというのは、少々厳しすぎるのではないかと思います。また、同時同量が達成できなかった場合に発生するインバランス料金が非常に高い。例えば100kWと110kWと需給の不一致が発生した場合、10kW分については非常に高い料金を電力会社に支払わなくてはいけません。インバランス料金の見直しと、送電線の使用料のコストは、電力会社間と、我々が使わせてもらっている使用料とでは料金設定が大きく違い、見直すべきです。透明性を持たせて説明できるような送電コストを出していただきたい。

――料金の問題は切実ですね。

池田:自家発電のアンシラリー料金の問題もあります。これは、「周波数や電圧が振れたときには電力会社がバランスをとる。自家発は変動の要因の一つで、それを安定させるには電力会社の発電機をもって安定させる。変動調整分のコストは自家発が負担すべき」として、我々がアンシラリー料金を負担しなくてはいけません。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの電気は不安定になる懸念がありますが、我々の自家発は、スチームタービンのボイラーで、電力会社と同じようなやり方で発電しています。電力会社が系統の周波数や電圧を安定化させているのは認めますが、現在のアンシラリー料金は高すぎると思っています。